第51話 召喚魔法

「……という感じで今魔王になってるんだ」

 私が語り終えると、ミルガウスとセラは感心する。

「よく知らない世界のためにそこまでやれるね。私は別に私以外の魔物が滅びても何とも思わないけど」

 ミルガウスは魔物らしい冷淡な感想を口にする。


「正直旧魔王陣営の政局とかはどうでもいいんだけど、一つ気になったのは現状の異世界人召喚魔法で召喚される人の資質についてかな」

「らしいね」

 ミルガウスは徹底して魔法の研究以外には興味を示さないようだ。

「私も興味があるわ。それが意図的にそういう風に作られたのか、単にそういう性質の人が特別に召喚されやすいのか、それとも異世界にはそんな人が多いのか」

「うーん……まあ陽キャと陰キャが半々だと考えると三連続で当たるのは偶然の範囲内の可能性もあるけど」


「確かに、例が少なすぎて研究対象にしづらいところはあるよね。でも、当代さんにアドバイスするとしたら、もし仮に穏健派魔王陣営というものを作るとするのならばこの研究は重要になってくると思うということかな」

「どういうこと?」

「穏健派魔王陣営(仮)は積極的に戦いたい魔物はかなり少ないと思う。ということは狂暴性で勝る魔物陣営や組織力がある人間に対しては戦力で劣る。何かの拍子に攻め滅ぼされないようにするためには、戦力が欲しい。だとすればこの召喚システムは悪くない」

「なるほど」

 確かに、もしこのシステムで召喚されるのが私のような人物ならば何等かの手段で穏健派陣営を助けてくれるだろう。

「そうね、問題は教会の召喚システムがそうなっているのか、誰が召喚してもそうなりやすいのかというところだわ。実験したいけど魔石がないと難しいわね」


 そこで私はふとあることを思いつく。

「そのやり方って魔石がないと召喚の魔法が発動すらしないのかな? それとも単に威力的なものが足りないだけ?」

「どちらかというと後者ね。多分私の魔力が莫大なら魔石なしでもいけるのではないかしら」

「じゃあ、仮に世界と世界の魔術的な距離が近づけば魔石なしでも召喚し放題ってこと?」

「……そ、そうね」

 セラが驚いたような目でこちらを見る。ミルガウスの方も目を丸くしている。


「いつの間に魔法を勉強したのかしら?」

「ちょっとそういうのに詳しい人に会ってね。その人も独学で世界と世界について研究してた」

「でもそうね、もしそれが出来るなら召喚魔法のハードルは下がるわ」

 セラは興奮した面持ちで語る。

「えー、でもハードルが下がったらロマンが減っちゃわない?」

 ミルガウスの方は微妙な反応である。

「ロマンも何も、穏健派陣営の戦力として使おうって言いだしたのミルガウスじゃん」

「そうだけど」


「そうなったら、是非とも私を召喚魔法係にして欲しいわ」

「おー、新魔王様とコネがあると得だね~」

 熱心なセラに対してミルガウスはやはり他人事だ。同じような魔法研究馬鹿に見えても、やはりスタンスは微妙に異なるのだろう。

「まあでもその辺はおいおいかな。今は差し迫った戦いを回避するのが先決だし」


「そうだね、ところで一つ頼みがあるんだ。それを引き受けてくれたらもう一冊試作魔導書をあげるけど」

「え、何!?」

 代償を全て失った私にとってあの魔導書は不完全だったとしても喉から手が出るほど欲しい代物である。私は俄然食いついた。

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