第2話 過去

 私がラノベしかない、と思い込んでいるのには単にそれが好きという以外にも理由がある。私は小学校のころアニメやラノベといったいわゆる二次元に出会ったけど、そのころは多分普通の子供だった。給食が終わったら外でドッジボールとかしていた記憶もある。


 そんな訳で、私は普通の中学生になるつもりで中学に入学した。ここでいう“普通の”に深い意味はない。私は一つのグループに入った。小学校のころと比べると中学では交友関係がよりグループ、という形に限定されると思う。そこは私と同じようなちょっと陰の者寄りのオタク女子のグループで、趣味とかもまあまあ近かったと思う。


「ねえ、まじまほだと誰が好き?」

 まじまほというのは当時はやっていた魔法少女アニメだ。三話で主要キャラ(だと思われていたキャラ)が死に、多くの視聴者に驚きと絶望を与え、その後類似作品が数多く出され続けた。

「私はあいちゃんかな」

「あたしは断然さくら派。幸乃は?」

「え、うーん、誰が好きというよりは作品全体として好きかな。最初は何も分からない主人公が魔法少女というものにポジティブなイメージを持ってて、それで成功体験を積んで、それでたくさんの人を救えるって思ってたところで尊敬してた先輩が死ぬっていう構成がうまいと思う」

「「……」」


 答えてから私は求められていた答えと何か違うな、と気づいたのだが本心だから仕方なかった。何で私が素直に好きなキャラを答えなかったかと言えば、私の中でキャラを好きになるということにはもう少し高いハードルがあったからで、ちょっと容姿がいいとか可愛いシーンがあったとか、それだけで「好き」とか「嫁」とか言っちゃうことに抵抗があったからだ。

 誰もそんなことなんて気にしないんだから素直に一番かわいいと思うキャラでも言っておけば良かったんだけど私にはそういうことが出来なかった。


 もう一つ似たような例を挙げる。その日、私が続編を楽しみにしているラノベの発売日で私はそわそわしながら授業を受けていた。というか、登校前に買って授業中に読もうとすらしたが本屋が開いていなかった。いつも放課後しか行かないから朝いつからやってるかなんて意識していなかった。そして迎えた放課後。

「ねえ今からカラオケ行くんだけど幸乃も来るよね?」

「いや、でも今日は発売日だから……」

「えー、別にカラオケ行った後で買えばいいじゃん」

 まあそういう考え方もあるのも分かるが、一分一秒でも早く読みたいと思うのがオタク心である。

「うーん、でも……」

 私がそんな感じで煮え切らない態度でいると、彼女らはやがて諦めて私を置いてカラオケに向かった。


 別に一つ一つのことでそんなに怒っているとかショックだったとかいうことはないんだけど、それぞれ小さな違和感があった。何というか、私と彼女らでは微妙に物事の感じ方とか住む世界が違うんじゃないか、というような。実は他の人もみんなそれぞれ小さな違和感を抱えているけどそれを殺して生きているのか、そもそも私だけはみ出しもので、私以外は普通に仲良くやれているのか、それは私にとって永遠の謎だ。ただ、中学入って初めて入ったそのグループともだんだん疎遠になっていき、私は自然とクラス内人間関係から孤立するようになっていった。


 ちなみに、中学のときの私は漠然と人間を陰と陽の二極だと考えていたけど、今思うと彼女らは陰の中でも陽寄りの存在で、私は陰の中でも陰だったということだと思う。


 そういうことがあって、私は中学のころから一人で黙々とラノベを書いていた。昼休みには図書館で本を読み、家に帰って執筆。別にそれを寂しいとかも思わなかったし、結果が出なかった点以外では充実していると思ってもいた。高校に入って人間関係がリセットされてもそれは続いた。そしてそれがずっと続くものだと思っていた。

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