とある娘の朝

Tenc

第1話


あさはにがて

だって ねむたい

たいようはまぶしいし フカフカ おふとん

まだ でたくない……


「こらッ ネル〜 いつまで寝てるの?いい加減起きなさい!」


おかあさん

おかあさんはおきてすぐ げんき

すごいな ねむたくないのかな?

げんきなおかあさん だいすきだけど…


「まあまあネネヤ せっかくの休日なんだし、もう少し寝かせてやろう…」

「クウェン!あなた や〜っと起きてきたと思ったら酷い寝癖!イイ男が台無しじゃない

さっさと顔洗ってらっしゃい」


おとうさん

おとうさんはわたしといっしょで

おやすみの日は なかなかおふとんからでない

かみのけはねてる ぷぷ へんなの!


「な〜に笑ってるの ネル?ほら、朝ご飯できるから はやくお布団から出ていらっしゃい

じゃないとぉ〜…」


「こーちょこちょこちょっ!」

「きゃあー!きゃっきゃっ!」

「母さん!パン焦げちゃってるよ!?」


キッチンからかおをだしたナナルクおにいちゃんは

きょうもそばかす ウネウネのねぐせ

「うそ本当!?」って おかあさんがとんでいく

もくもく くろいけむり くさぁい



「ネル 急な呼び出しなんだけどね 父さんと母さんはこれから 双蛇党の統合司令部に行って大切なお仕事をしてくる

泊まり込みになるかもしれないから 今夜はお兄ちゃんの言うことを聞いていい子にしてるんだよ」

「二人が大好きなオムレツ作っといたからね お腹が空いたらあっためて食べてね

いい?父さんと母さんがいないからって 悪さしちゃダメよ〜?」

「だいじょうぶ!ねる ちゃんといいこにしてるよ おにわのお花に おみずやりもするよ!」


そうじゃとうっていう ぐりだにあをまもるために たたかってる人たちがいて

おとうさんもおかあさんも りっぱなせんしなんだって おにいちゃんがいってた

みんなをまもるおしごと かっこいいけど さいきんは…ばんぞく?がわるいことをするから いそがしいみたい

いつかえってくるかな さみしいな


「ネル」


ぽすん

あたまのうえに すこしおおきな手がのった


「お兄ちゃんがいるから大丈夫だぞ

…あとで戸棚に隠してあるクッキー 食べちゃおうか!」


ニッ ておにいちゃんがわらったら いたずらのあいず

ニッ わたしもおなじかおになる


わたしはみんなのことがだいすき

おおきくなったら わたしもせんしになって

おとうさんとおかあさん おにいちゃん

まちのみんな まもれるようになりたいな…





懐かしい


ずいぶん昔の夢を見たような気がした

ゆっくりと身体を起こして 伸びをひとつ


朝は得意だ

早朝の霞がかった澄んだ空気や 誰もいない時間から支度して ミルクを一杯飲み終えた頃に

眠そうに起きてくる みんなの顔が好きだから


たまに早起きするんだけど… リオンやジジーちゃんには適わない

エリーちゃんなんてもう出かけてたりする日もあるし マネーさんはおじいちゃんみたいな時間から起きてるの


懐かしいといえば 兄さんは元気だろうか


数年前、わたしが冒険者になってグリダニアを出たあとに リテイナーとして無理やり後を追いかけてきたナル兄さんの心配性には手を焼いた

とはいえ お互い多忙な時期が重なれば しばらく会わないこともあって

最後に顔を見たのは半年くらい前だったかな…久しぶりに連絡を取ってみるのもいいかもしれない


「ネルゥ…オハヨ マゲムスンデ!」


声のする方へ振り返ると 寝ぼけ眼のララフェルがヘアゴムを突き出しながらこちらを見ていた


「ねこま」


おはよう、と返事をして手招きする

ねこまのマゲを結うのは朝の日課でもある


そうこうしているうちに キッチンからは朝食の香りが漂い あちらこちらで談笑に花が咲き

それぞれが思い思いに活動をはじめてFCハウスに活気が満ちていった


太陽は高く昇り どこかで新たな旅立ちを予感させる風が 爽やかに吹き抜けていく



今日も冒険のはじまりだ

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