第18話1950
ジュゼッペーキアラの事件の3日後、村は当時、神社の取り壊しを検討したが、年寄り衆の話し合いにより、内装を変えて御神体を置くことで、村の正式な神社として残そうと言う話しになった。
そこで、神主には奈良市内の神宮から招聘することになり、村は、神社の内装工事と新しい神主を迎える準備で追われていた。
「辰さん、これなんすかね?この壺」
「あんまり中の物さわるんやないで松。年寄り衆に怒られんで」
50cm四方の丸いつけも樽のような壺の中に、何か白い粉のようなものが入っており、
施工作業をしていたもの達が、不審に思い
村長に届け出ていた。
「村長、なんかようわからん塩でもない、砂糖でもない物がありましたで。毒の類いちゃいまっか?」
中を見ながら村長は、低い声で息を漏らしながら、専門の保健所的な者に預け、調べてもらおう。
そう言って、その謎の壺を奈良市内に持っていくことにした。
1か月後
奈良市内の保健所から大阪の製薬会社に渡り、その製薬会社から多治見村へ連絡が入り、壺の中身を調べてもらった結果が言い渡された。
「村長、この壺の中身なんですが、これは現在どこにも存在しない、植物性の薬物です」
「はあ、とおっしゃいますと」
「はい、これはモルヒネに近い植物性の薬物で、単刀直入に言いますと、麻薬の類いのものになります。しかも、モルヒネの何倍もの作用をひきおこすような、大変危険なものです」
「なんですと!?」
20世紀には入るまでは、アヘンで作られたモルヒネやヘロイン。南米のコカの葉で作られるコカインなど、ほぼなんの取り締まりもなく世に出回っていて、古代ギリシャでは宗教的な儀式に使われたりしていた。
当時の日本では、長田長義が開発した化学合成薬物、覚醒剤が出回ってはいたが
それも及ばないほどの強力な作用を引き起こすとされた壺の中の薬物は、海外から持ち込まれたというのは間違いなく、
一旦、製薬会社を通じ、日本政府が管理することとなった。
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