第17話双子の性格

「結局、何も手がかり掴めへんかったな。遼。」

一は、カメラで辺りの写真を撮りながら、

遼と来た道を戻っていた。


「ああ、でも、今日少しだけわかったこたとがある」


「遼、俺もそれ言おうとしてた」


「ああ、花音ちゃんと咲希ちゃんは…」


「ああ、花音ちゃんと咲希ちゃんは、見た目は似てるが、性格はかなり違っている。だろ?」


「いや、そういうことじゃない。一。お前なにどや顔してんねん?」


遼の視点とは、全く違っていた一の言葉に、

遼はあきれ顔になっていた。


「いや、俺が思ったのはな、一。花音ちゃんと咲希ちゃんは、何かを隠している」


「何かって?」

そういうと、一はカメラを遼の方に向けた。


「やめろって、いや、何かと言われれば、さっきの咲希ちゃんの話しぶりだったり、昨日の花音ちゃんの様子だったり、何か違和感を感じる」

遼は、口の辺りを手で覆った。


「刑事の勘か?」

と言って一はシャッターを押した。





ー山部邸ー

「村長、あがらしてもらうで」


村役場の、田辺孝三が山部の家にやってきた。

田辺孝三は、徳三の一回りしたの年齢で、あの50年前の事件を知る一人だった。

知っていると言っても、当時はまだ5歳かそこらで、どちらかと言えば、その後の村を知っている人物といった感じだろうか。


「…孝三か」

徳三は、いつも通りに応接室でキセルを燻らせていた。

応接室に入ってきて、徳三の前に座り

また、田辺孝三も自身の煙草に火をつけた。


「例の若い刑事二人やけど」

と言いかけた孝三に、少し不思議そんな面持ちで徳三 は眉を上にあげ腕を組んだ。


「若い二人?一人はお若いが、もう一人は40代くらいのはずやったが…」


「あれ?二人とも20代のはずやて聞いたけど」

孝三が首をひねっていたその時、応接室の戸が開き、奥方が茶を持ってきてくれた。


「どうぞ。ああ、もう一人のかたは、あの若い刑事のお知り合いの記者か何かの方らしいですよ」


「ふむ」

と言って徳三は茶を啜ったが、孝三は奥方に目をやり頷いた。二人とも納得したようだ。


「すいません。戸を開ける前に聞こえたもので。失礼します」

奥方は、そう言ってそそくさと部屋を出た。


「村長とこのお孫さんがな、その若い刑事とけっこう話ししとるそうやで」


「ほうか。それがどないかしたんか?」

徳三は椅子にもたれ、顎をさすった。


「ま、余計な事やけど。徳三さん、あんた。坂田一二三がどこにおるかしってんねやろ?」

お茶を一口啜り、見開いた目をして孝三は、徳三の方を見ていた。


その言葉を聞き、徳三は前屈みの姿勢で

声を低くして言った。




「孝三。その話はここでするな」


「いや、まあ…」

そう一言言うと、田辺は額の汗を拭き

息を吐いた。


「孝三。お前んとこの子も大変やろけどな。辛抱せいや」


「…」


徳三と田辺の含みのある会話は、いったい何を意味するのか。その時はまだ知るよしもなかったが、この神落ち村の本当の意味を

私達は知ることとなる。



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