第12話誕生日の秘密

「…そういやお兄さん達、名前なんて言うの?」

泣き止んだばかりの花音に聞かれ、今さらと言うか、言ってなかったっけ?

と言った表情の二人だが、一応自己紹介をした。


「夏川遼。よろしくね花音ちゃん」


「河名一。職業は正義の見方だよ。はじめちゃんでいーよ」


遼のやさしい目と言葉使い、一のお茶らけた喋り口調で、やっと花音は笑顔を見せた。


「おもしろーい」


「花音ちゃん。俺と一とこの村にしばらく居るから、なんかあったらいつでも連絡ちょーだい」

遼は仕事用の携帯が記されている名刺を花音に渡した。


「花音ちゃん。なんか知ってることあったら、なんでもエーから教えてね。俺と遼は100%花音ちゃんの味方やから」


安心した笑顔を見せた花音だってが、突然何か思い出したような顔になった。


「そういえば、先月咲良ちゃんの誕生日だったんやけど、あの子が欲しがってた服、私と咲希のお古やねんけど、それをあの子ん家に持っていった時なんやけど。」


と花音が話し始めた時に、男性の呼ぶ声がした。


「花音ー!」


声の主は、花音の父定則だった。

こちらに近づいてきて軽くお辞儀をしてきた。


「ちょっと遅いなー思て、多分ここやと思うて迎いに来ましたわ」


「すいません。少し話し混んでしまって」

遼と一は定則に頭を軽く下げ言った。


「お父さんごめん」


「こないだの事もあるし、咲希も家で心配してるし、ほな帰ろうか」

定則は、別に怒っている訳でもなく、二人に頭を下げ花音を連れて帰っていった。


「なあ遼。誕生日…なんやったんやろ?」

「さあ…」


遼と一は、明日、村にたったひとつの派出所に向かった。


「あれ?どうもどうも夏川刑事」


派出所に入り口に、署長の川村が立っていた。


「どうもこんにちわ。古林さんはご一緒やないんですか?」


川村は、どうぞ中へと二人を誘って奥の部屋へ通した。


「ええ。県警の鑑識の結果を見て、ええ、例の神隠しの女の子なんですが、その鑑識の結果を見た瞬間、慌てて本庁へ戻ると出ていかれましてね。ええ。」


「そうですか。あ、こいつは…」


「どうも、ルポライターの河名です。」

河名は川村に名刺を渡した。


「ほう、ルポライターさんで。フリーの」

「ええ、フリーです」


「お若いのにフリーで。やり手ですな」

「いや、まあいろいろありまして」


社交辞令のような感心をする川村に、苦笑いをする河名だった。

途切れたタイミングで、遼が質問した。


「鑑識の結果というのは、いったいどのような」


「あー、はいはいええ、それが女の子の遺体なんですが、外傷が一つもなくて。ええ」


「外傷がない?」

て言うか、この人身ぶり手振りが激しいし、なんだか「ええ」とか「はあ」とか多くて

忙しい人だな。

遼と一は、川村の話しを聞きながら

そう思っていた。


「ええ、そうなんですよ。それに、死後36時間程しか経っていなくてですね。女の子が行方不明になって2週間ほどですから、10日以上は、どこかしらで生きていたと言うことになりますね。ええ」



「…やはり連れ去りか」


そこで一が手を上げた。

「はい。で、死因はなんやったんですかね?」


「そう、それなんですよ。それで女の子の体から薬物のようなものが検出されましてね。ええ」


「薬物⁉️」

二人は、想像もしてなかったワードに

同時に声を上げた。

7歳の女児と薬物。

どうにも繋がらない。


「え、ええ。それが、その薬物なんですが、今世の中に出回っているものと、どれも一致しないもので、見たことない配列だと言うんですよ。ええ、鑑識が」


「麻薬ではないと」

遼は口に手をやり、静かな声で言った。


「ええ、いや、それも現時点ではよくわかりませんで。ただ、それを見て古林さんが慌てて飛び出していかれましてね。ええ」


この人は何回「ええ」を言うのだろう?と

一がまた手を上げた。


「署長。それで一つお願いがあるんですが」






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