第11話山梨咲良
咲良は、少し変わってる子で
いつもみんなの和の中から外れている娘やった。
いっつも一人で、その辺の道端の花や虫ばっかり見てる娘やった。
ほんで私らが儀の稽古中、境内に一人で見に来てて、いつか私もやりたい言うてね。
私らあの子に躍りを教えたり、一緒におやつ食べたりしてる内に、
いつの間にかあの子、私らのことを「お姉ちゃん」て呼ぶようになって。
「お姉ちゃん、ほら見て」
「ひー!咲良ちゃん、それなに?」
「蝉の脱け殻。咲希姉も見て見て」
「ちょ、ちょ待って。わかったから。そんなん苦手やし。ポイしよポイ。ね、ね」
「はーい…せっかくエエもん見つけたのに」
私ら喜ばそう思て持ってきたのに、あの子しょんぼりしてもうて。
そんなあの子見てたら可愛いなって
咲希と二人でよく両側から挟むように抱き締めたりしてて…
あの子…いったいなんで…
「花音ちゃん…」
「…」
しゃがみこんだまま、前を見据え泣き出す花音を見て、二人は言葉を失っていた。
「あの子…咲良は、ちょっと変わった子やけど、明るくてホンマにええ子で…私ら二人のホンマの妹のように…」
涙が止まらず、咲良への思いを語る花音を見て遼は、片ヒザをつきしゃがんで花音に言った。
「必ず…解決して、咲良ちゃんに良い報告できるようにするよ」
「でも、もう咲良は帰ってケーへん…」
睨むように遼を見つめて言った花音は、言われもなく逝ってしまった咲良に対しての
心の置き所がないのだろう。
もどかしそと悔しさ、悲しみが入り雑じって
今は、涙を流して咲良を思うことしかできないのだろう。
一も地に座り、砂地の砂を握りしめ花音に言葉をかけた。
「花音ちゃん。俺らがもうここで二度と、こんな悲しい事が起こらないようにすると約束するよ」
「は、一…」
涙をこらえて遼は自分たちに言い聞かせた。
今は泣いている場合じゃない。
咲良ちゃんみたいな可愛い盛りの子供が
何かの犠牲になり、
そして、周りの家族や花音ちゃんのような子達が小さな胸を痛めている。
ここで自分が絶対に解決して見せる。
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