第8話河名 一
この日本の人類史において、大昔の人と人との性愛の類いは、かなりおおらかだったという。
「近親相姦」 「同性愛」 「夜這い」
これらが、ちゃんとした形として定められたのは、明治以降の話になるらしい。
つまり、ついこの間までなんでもありだった。てこと。
私、河名は、幼なじみの夏川遼からの依頼で、とある山間の小さな村に向かっている所なのですが、いや、依頼といっても探偵とかそういう類いの生業ではなく、私この年で
フリーのルポライターをしておりまして、
あ、若いのにフリー?
会社を首になったのか、組織に入っての人間関係の構築が下手なのか。
と、よく思われがちなのですが、
あくまで自分の意思でのフリーです。
昔から、田舎村の風習だの集落に今だ残る奇習などに興味があり、そういった記事を取り扱っている出版社に就職したのは良いのですが、上司と反りが会わず1ヶ月で辞めて、ついでに、それが原因で実家も追い出され
晴れてヤモメ暮らしのフリーのルポライターをしているというわけでございます。
あれ?自分なんかおかしい事言ってますか?
それになんといっても、山間の小さな村で幼い少女が神隠し?
こんな時代錯誤な事が、本当にこの現代にあるのか?
否が応でもルポライター魂に火がつくと言うものです。ええ、フリーの。
まあ、それと言うもの子供の頃のとある体験がきっかけ…
なんやかんや言ってる内に、噂の多治見村
通称「神落ちの村」に到着いたしました。
こうやって自由に動けるのも、フリーの良さ醍醐味ってやつですよ。
村の入り口付近に立っているスーツ姿のボサボサ頭は、幼なじみの遼なのかな?
何かもう険しい顔しちゃってさ、あんな顔やったっけ?
すっかり刑事やん。
「おう、遼!久しぶりやな。」
「おう、一。成人式以来か。急に呼び出したりしてすまんな。」
二人は握手して称えあった。
「いや、かまへんよ。俺フリーやし。幼なじみのお前の頼みやったらしゃーないで。あ、遼これ」
河名は遼に、持っていた紙を渡した。
「ん?何?あー、タクシーの。領収書。なつかわ様。…て俺の名前やん!」
「あはは、なんてとこにしていいかわからへんかったから。上様やとあれかなとおもて。じゃ、よろしく」
「あははじゃねーよ。このままやと俺が払わなあかんやんけ。あー、タクシー行ってもうたし」
「国家公務員様やろ?そのくらいでヤイヤイ言うなや」
「公務員の給料なめんな」
呆れる遼と、へらへら話す河名とで
二人は歩き出した。
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