第7話お伽噺の森
村長の山部の話が終わり、二人は信じられないといった表情を見せ、山部の方をみていた。
「まるでハーメルンの笛吹のようですね」
遼は右手で顔覆って山部に言った。
「ハーメルンって…あれか、あれの事やな」
古林は、知っている口ぶりで遼に目配せしていた。
「そうです。まるでドイツの童話に出てくるハーメルン笛吹者のようですが、こちらは実話です」
「まるでおとぎ話のような…お伽噺の森…か」
遼は何か考えているようだった。
その時、古林の携帯に電話が入り、古林はすぐに出た。
「失礼。県警からの電話なので」
と言って、廊下に出ていった。
「 山部村長。その話しを聞いたとしても、今回の事件と何か関係があると」
「いや、そういうわけではありませんが、そういう事があったからか、それを知る村のものは、こういった事には少し過敏になるんかもしれませんと思て」
「山部村長は、今回の事件は連れ去りや誘拐ではなく、呪いの類いだとお思いなのですか? 」
「いや、そういう事では…さすがにこんな山間の田舎村ですが、この平成の世に呪いなどと…」
勢いよく戸が開き、古林がもどってきた。
「遼!行くぞ!行方不明の少女の遺体が発見された!すぐ近くだ」
「古林さん!ちょ…すいません。失礼します」
あわただしく二人は山部邸を去っていった。
現場は、神社からさらに山の奥に入った森の木が途切れ、花畑のようになっている一帯があり、そこの中央に何も着ていない状態で発見された。
「遺体は?」
古林は、現場に厳戒体制を引いている県警のものに手帳を見せ聞いた。
「は、鑑識の方にまわしております」
「発見者は誰だ?どんな状態で発見された?」
「は、発見者は村の猟友会の方でして、いつもこの道を通り猪鹿等の狩りをしていたとの事ですが、昨日通った時には遺体は無かったと言っていました」
「ふーん…」
古林は顔を顰めて現場を見つめていた。
「古林さん。河名が村に着いたみたいなんで、少し外させてもらって良いですか?」
「ああ、河名君着いたんか?かまへんよ。ついでに河名くんと村の人の聞き込み頼むよ」
「了解です」
「遼。少年探偵団ごっこをするには、今回危険かもしれんぞ」
古林にそう言われた遼は、髪をかき揚げながら苦笑いを浮かべ言った。
「あいつと誓ったんで、それにもう自分は刑事なんで、ごっこちゃいますて」
遼の背中を見送り、古林は膝をついて花畑に咲いている花に目をやった。
「不思議な花やな…欄?いや、こんなところに。な、そこの自分。花とかくわしないか?」
古林は目の前にいた県警の若い巡査に聞いた。
「いや、自分は花とかは全く…」
「そらそやな。誰かおらんかな?写真でも撮っとくか」
古林は立ち上がり、眉を潜め辺りを見渡していた。
「神隠しにハーメルンか…そんなお伽噺話のようなことが繰り広げられた森で、今度はどんな妖怪が出てくるのかな。遼」
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