第6話
北へ向かう道は六甲山を抜けて行く。狭くて両側から迫る様な木々の中を降りしきる雨の中進んで行む。
バイザーにかかる水飛沫は半端なく、それをグローブで拭きながら松本の後を追って行く。
瀬戸大橋から北上をすればするほど雨が激しくなる。
なんてこった
ひでぇー雨だ。
心で呟く。
台風が近づいてるんだな。
目の前にトンネルが見える。
少しホッとする。トンネル内だけが雨を受けないで済むからだ。
さっき松本が言った。
これを抜ければ西脇は近いと。
まーそんなことはどうでもいい。
僕には土地勘何てありゃしないし、ただ松本の後を追うだけだ。
LINEが鳴った。
誰だ?
#やぽー、こだま元気?
ん?イズル?
何だよ、こんな時に。
#何?イズル?今・・めっちゃ雨ん中。
#えーマジで?こっちさー、めっちゃ天気やで。全然雲もなく晴れ渡ってるわ
#マジ?台風・・来てるやろ?
#うん、マジ天気良いで。
全然、台風来てる感じない。
でも、飛行機とか駄目みたいやからどこにもいかれへん。
しゃーないから今日は海で泳ぐねん!!
海、めっちゃ綺麗やし、波も全然高くないしね!!
#すげーな。そっち天気いいんやな!!
#うん、ほな、海楽しんでくるわ。
じゃあまたね!!こだま!!
LINEが切れた。
なんだ・・
天気が良いのか・・
それって嵐の前の静けさじゃねぇのか・・・
そう思った直後、
うっぉ!!
思わず声を出す。
トンネルを出たらいきなり、大きな水だまりがあって泥水を全身に被った。
たまんねぇー!!
どうせ水被って濡れるなら、イズルみたいに綺麗な海水を被りたいよ。
くそっ
アクセルを回そうとした時、松本の原チャのブレーキランプが点滅した。
おっと!!
ブレーキをかける。松本が停止して原チャを降りたのが見える。
原チャの側まで行くと、松本が赤灯を持った警備員と話している。
何かあったのか、話し終えた松本が持って来る。
バイザーを上げて聞く。
「何かあったん?」
「どうもこの先、雨が激しく降り出していて土砂崩れが激しいらしいので迂回しなくちゃ駄目らしいですよ」
「そうなん?」
「で、ほらこの横の林道あるでしょう。ここを上ると少しすれば左右に分かれる道があるからそこで迂回路の案内があるからそれに従って行けばいいそうです」
言い終えると松本が原チャに跨り、発進すると林道へと進んで行く。
僕も後をついて行く。
杉木立の林道をゆっくり昇っていく。松本の原チャリから煙が立つ。深い緑の覆う林道。
あー・・なんかイノシシとか出て来そう。
自然とアクセルを回す手に力が入る。
やがて林道の中で左右に分かれる道が出て来た。
右側の道の入り口に案内板が立っている。
――――迂回路、西脇方面
それを見て、僕等はそっちに進む。
暫く進むと道が険しくなった。舗装される部分が少なくなる荒れ道になり、とても普段利用している道ではないのが分かる。
ひでぇ、道だな。
思っていると、また悪いことに雨が激しくなってきた。
おわぁ!!
見れば路肩だけでなく、あちこちに落石が転がっている。
ちょっとマジか・・
これ、本当に迂回路か?
車、行けるんか・・これ。
#こだま君、ちょっと停まりましょう
松本からLINEで声がかかる。
僕等は道脇に停車した。
僕が言った。
「これってさ、マジ迂回路?」
松本も同じ考えなのか、頭を傾ける。
「違うのかもしれませんね。でも案内板は確かに右側でしたよね」
僕もそれは見た。
確かに右側に立っていた。
「まぁまだ少しだけ進んだだけですから。戻りましょう。こっちが正しければさっきの警備員の所に戻ればいいだけですから」
僕が頷く。
その時だった。
――空気が揺れた!!!
ドッぉおおおおーーーーーーーン!!
鋭く轟く雷鳴!!
僕等は頭を抱えて地面にしゃがみ込む。
間を開けず、再び雷鳴が鳴り響く。
ドッぉおおおーーーーーーーン!!
ドッぉおおおーーーーーーーン!!
やばい!!
雷だぁあ!!
近くに落ちたのか激しい雷鳴で地面が揺れる。
「マジ、まじまじ‼!ヤバイ!!」
悲鳴を上げる。
松本が急いで原チャに乗る。
「こだま君、戻りましょう。危険すぎる」
お、おぅ!!
泣きが混じる様な叫びで答えながらバイクを反転させようとした時、
「あ、危ない!!」
松本が叫ぶ!!
う、ぁあlぁああああ!!!
突然、道がゆっくりと崩れ始めた。
リ、リアル、土砂崩れだ!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます