第110話 オークの集落発見。
草原のほぼ中心あたりに降り立ってみた。小さな魔物の反応はたくさんあるけれど、大型の魔物の反応はほとんどない。この平地は平和そうだ。草原とはいってもその草の背丈が僕の身長ほどあるので、土魔法で耕す。ひろさはおおよそ4ヘクタール。ほんとは1ヘクタールの予定だったんだけど、自分を中心に100m四方のところを半径100mと想像してしまったために、最初は直径200mの円形になってしまった。そこでそれを四角に広げた結果が4ヘクタール。ちょっとした競技場より広いよね。
また魔物対策と景色確保のために、草の背丈と同じくらいまで土地を隆起させてもみた。4ヘクタールもある舞台のような感じになった。周りとの段差で落ちないように気を付けなければ。
もともとここに居たであろう魔物は、土へと帰ってしまった。正確に言うと地面をひっくり返したので埋まっただけなんだけど、あとで重力魔法で整地もしたし表面はかなり固くしてしまったので、よほど強力なヤツでなければ地面から出てくることはないだろうな。
さて、なぜこのような魔物の山開発を実施したかというと、隠れ家づくりのためだ。トイレや風呂の件も含めて、緊急避難場所が必要だよね。ひとりでのんびり過ごす時間も必要だし、ここでなら人が居ないから、インベントリの中の魔物だって取り出して観察することができるし。
早速最初に使っていたトレーラーハウスを設置して、太陽光発電も完備。水は魔石でどうにでもなる。下水に関しては後で排出場所を探さなくてはならないけれど、浄化槽の設置まではサクサクと終わらせた。あっ、結界を忘れるところだった。埋めた魔物対策を含め、地面を含めて整地した4ヘクタール全体に結界を施す。魔物以外は透過可能な結界だ。これで四季も楽しめるだろう。四季があるのかはまだ知らないけれど。
出来上がった平地と建物・・・元魔物の島は地面をコンクリートで固めてしまったからものすごく違和感があった。そしてここも200m四方の妙に殺風景な景色が広がっている。ちょっとガーデニングとかビルの屋上緑化の情報でもしらべて、何かしら景色を変える必要性は感じる。ぜんぜん田舎っぽくない。
あとは・・・小腹が空いたし、ちょっとひと休みしてコンビニ弁当でも食べるかな。
インベントリから取り出したコンビニ弁当の消味期限はもう1か月以上前の物。時間停止されてるとはいえ、こういうラベルを見るとちょっと引くよなぁ。食料品もまた新たなのを仕入れようと思う。食材系はすべてログハウスに置いてきたし。
「静かだ。」
食後、ビーチではないけれど、ビーチパラソルの下サマーベッドに寝そべり、ひと時の静寂を楽しむ。というか、静かすぎないか?結界は張ったけど、音とかは普通に透過するはずなんだよね。おそらくここまででビデオに録音された音声は、風切り音や建物建設時の音と僕の食事の音、そして独り言だけだな。
周辺確認のため、魔石探知の範囲を広げてかけてみる。あれ?なにか同じくらいの大きさの魔石が結構大きな集団で存在している。ゴブリンよりは大きめだなぁ。調べに行ってみようか・・・。あ、先にトイレ使えるようにしなきゃ。とはいっても、浄化槽を埋設するだけなんだけど。浄化槽から先の下水排水は今のとこ草原に垂れ流しだな。魔物の山さん、すみません。
いろいろとスッキリしたので、偵察に向かう。録画用のメモリやバッテリーは既に交換済み。4K録画ってものすごくメモリ容量を消費するのでHD画質に落としておいた。目視重視の偵察ならこれで十分だろう。
空からの偵察なので、直線移動だ。同じ大きさの魔石の集まった集団は草原ではなく草原に接する林の中にいるようだ。木々が邪魔でかなり近づかないと目視はできない。速度を落としゆっくりと目標に近づいてみる。200以上の同程度の大きさの魔石の反応がある。数は数えるのが面倒なのでおおよそだ。
おお、あれ、あれは確かオークじゃないか?本当に豚の顔して二足歩行してるんだ。知能はどんな感じなのか、言語は?スマホで魔物図鑑を確認してみるが、あまり詳しい説明はない。ただゴブリンよりは全然強いそうだ。
僕は高い木の上から、オークの物らしき集落を観察している。なんか槍とか持ってるし、腰布とか巻いてるわけだから、それなりに文化があるのかもしれない。槍の穂先の材質はまだわからないけど、金属ではないな。もし言語で会話しているなら、<トランスレート>の魔法を使っている僕ならば聞き取れるだろうから、もう少し近づいてみよう。
かなり近づいてみた。二足歩行しているけれど、図鑑の通り人間っぽくはない。どちらかというと頑張って二足歩行に進化した豚という感じか。手足とかどう見ても二足歩行に向いているとは思えない。これは獣人という感じではないな。まあ体型はそれなりに人に似て居るかもしれない。同じような体型の人は見たことあるし。でもでかいよ。普通の豚でさえ300キロ以上あるらしいから、このでかさだと多少スリムになっているとはいえそれ以上だろう。よく二足歩行できるもんだ。だからあれだけ後ろ足というか足太いんだな。でも3m近い身長だから、300キロくらいなら普通かのか・・・いや人間ならそれでも200キロ位でしょう。
それよりあの手、ようするに豚足で槍持っている方とか、ものすごく器用だよなぁ。でも指は豚足より長いか。周りにある小屋のような建物もあの手で作ったのなら、思ったよりオークは器用なんだろう。
ん?そういえばモンスター・ボアというネーミングから考えるとなんでオークはモンスター・ピッグとかじゃないんだろうか。二足歩行だから?もしくはモンスター・ピッグはまた別進化を遂げたモンスターとして存在するのだろうか。魔物図鑑見てみよう。
モンスター・ピッグはいなかった。でも、モンスター・ボアの変種に魔物系豚らしきものはいた。まあ豚も確かにイノシシ科ではあるな。
では会話などしていないか、集落を少し回ってみようか。豚は匂いに敏感という知識くらいは僕にもあるので、障壁には匂いを通さないように設定を追加しておく。あいつら地中のトリュフの香りをかぎ分けるんだよね。
集落で一番大きな建物、まあそれでも小屋なんだけど、そこに行けばオークの偉い人とかいそうなので、向かってみる。もちろん徒歩ではなく飛行と透明化。
「村長、草原に異変が起きていると報告がありました。」
「なに、どんな異変が起こったというのだ。」
「はい、突然土地が盛り上がり、先に進めなくなったと報告が。」
うあぁ、普通に言葉理解できるよ。しかも僕の所業の話してるし。これ、ファガ国語、日本語、そしてオーク語で話す人がそれぞれひとりいる場合、僕はすべて同時に理解できということなんだけど、こっちの言葉はそのとき意識しなければ何語になるんだろうか。以前は茜さんにファガ国語で話しかけたりしてしまったもんな。これ、ちょっと意識するようにした方がいいかも。人里に出てオーク語で話してたら、洒落にならない。
それと、『村長』と僕が言語理解しているということは、あのオークが村長なんだろうな。別にひと回り大きいとかではないな。オークの社会ではどのように村長決めているのだろう。もしかして力持ちとか戦闘力で決めるのではなく、選挙とか知識力とかだとちょっとオーク見直すよ。この異世界の国と違って民主主義だったらどうしようか。だって目もつぶらでけっこう可愛いし。
おっと、会話を録画しているとはいえ、もうちょっと盗み聞きに集中しよう。
「場合によっては集落を移動させねばならん。もう一度詳しく偵察してくるように。」
「わかりました、村長。」
うむ、報告者は駆け足で小屋から出て行った。結構足も速いな。
「さて、どうしたもんか。村には500以上の村民がおるでなぁ~、集落の移動もすぐにとはいかん。家もまた建てなければならんから、また人間でも攫って来て建てさせるかのぉ。わしらはどうも細かい作業が苦手だからのう。」
めっちゃ説明臭く、かつ田舎の村長さんのような口調の独り言だけど、なんか不穏な発言あったよね。人間攫ってくるとか言ってたよ。まあ、あの豚足じゃぁ細かい作業は無理っぽいとは思うけど、あまりに不穏じゃないか?そして500以上って・・・。数えるのサボるんじゃなかった。
もしかしてこの集落の小屋を建てるときも人を攫って来たのだろうか。それこそ姫騎士さんとかが攫われてきていて『クッ、殺せ・・・』とか言ったのだろうか。そして攫われてきた他のお姉さんたちもなんというかこう、凌辱されたうえでオークの子供を産んで・・・。
うん、ちょっとこの集落中偵察してみよう。もしかしたらとらわれているお姉さんたちがいるかもしれないからね。
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