第109話 魔物の山再び。
モシュカの街は思ったより栄えていた。規模はカラガ砦の街の倍くらいはある。何より驚くのは荷馬車の多さだ。それだけファガ王国との貿易で栄えているということなんだろうな。カラガ砦のほうは・・・良く見てなかった。僕が再びこの街に来ることがあるかもしれないので、念のために転移先として目に焼き付けておこう。
ついでにコンデジで撮影もしておく。たぶんあのあたりが繁華街だろうけど、さすがに昼過ぎではそんなにお姉さんたちはいないようだ。まあ、外だし。
アレン、ヘイゼルのグディモフ親子になにかしら仕返しのようなことも考えないではないけれども、それこそ国際問題に発展する可能性も考慮して、今はペンディングにしておく。数日間はこの街の騎士さんや衛兵さんは僕を探すために駆けずり回ることになるだろうから、それが仕返しと言えなくもない。グディモフ親子は見つからない報告で焦れればいいさ。
「もしもし、何度も済みません、国王・・・えっと、オーグ様。もうグディモフさんの屋敷からは出ました。一応屋敷を出る旨を書置きしてきましたから、居なくなっていることはアレンさんも分かっていますので、ファガ王国側に何かしら打診があったら、よろしくお願いします。」
「そのいつも言っている『もしもし』ってなんだ?」
用件の前に『もしもし』の説明をする羽目になったけど、『ジャーパン皇国で通信魔道具を使うときの合言葉です。』と、適当に答えておいた。グディモフ親子のファガ王国側の対応については、適当にやっておいてくれるそうで安心した。サムワ王国に来ていきなり躓いてしまったけれども、こういうトラブルも異世界周遊の醍醐味のひとつだろうと納得しておく。
「そうか、とにかくグディモフの事は気にするな。サムアの姉には早馬で書簡を送っておいたから、10日後くらいにはもうそっちでも国賓待遇だろう。」
えっ・・・、僕はそんなこと望んでないんだけど。『目立たずのんびり異世界周遊計画』がいきなり台無しだよ。
「大丈夫だ、だぶん。タカムーラ姓を名乗らなければ、誰も気づかん。冒険者証にも姓は書いてないであろう。お前の顔もサムア側ではグディモフ親子以外誰も知らんしな。じゃあな。」
今度はオーグ様側からガチャ切りされた。うむぅ、それもそうか、サムアの街から・・・というかグディモフ領であろう場所から遠く離れてしまえば、問題ないよね。冒険者会館でギルドからこの国の魔物の山の情報も得たかったけど、それは他の街でもいいか。移動ついでにサムア国側の魔物の山遊覧でもしてみるかな。
でも観光といえば、ビデオ撮影だよなぁ。手持ちのコンデジとか普通のビデオカメラでは手がふさがってしまうから、ウェアブルなやつが欲しい。うん、ひとまず電気街に買い物しに行こう。
透明化障壁のまま日本の電気街の監視カメラの死角エリアに転移して、大手家電量販店で早速ウェアブルカメラを物色する。いろいろ種類があるけど、まずはレンズ交換できないことを考えてトリミングしても高画質な4K対応。手ぶれ補正も必須だな。見た目は透明化障壁を施すから気にはしないけれど、なるべく小型なのがいい。ヘッドマウントしたいからね。大手の量販店は作動とかを確認できるのが良いなぁ。普段通販ばかりに頼っていることを少し反省したよ。
ということで、国内大手メーカー製のウェアブルカメラとヘッドマウント用のアダプタを購入してみた。Wi-Fi接続で撮影した内容をスマホで確認できるから、いちいち機器を取り外してモニタに接続しなくてもいい。バッテリーの持ちがちょっと心配だったけど、外部バッテリーにも接続できるようなので、それも購入。でもなんで店員さんといい他のお客さんといい、僕の方をじろじろ見ているんだろうか。
あ、僕異世界の旅人の服のままだった・・・。恥ずかしいけど、まあもし誰かに声をかけられてもコスプレの一環だと主張できるし問題ない・・・よね?
徒歩で再び監視カメラの死角エリアに移動して再び異世界側上空に転移。ちなみにウェアブルカメラはすでに透明化障壁を施して身に着けている。でもこれ、透明化していると落としても気づかないのではないだろうか・・・。あとで対策考えよう。
高度を上げて北北西に進路を取り魔物の山方面へ。高度を高高度から低空へ、そして再び高高度にして時々スマホで撮影している状態も確認。撮影機器も問題なく作動しているな。もういっそのことこのまま大陸の縁を一周してしまおうか。いやいや、そのあたりは今後の楽しみに取っておかないと。
ゆっくりと飛んでいるせいもあって、やっと魔物の山の麓に到着。ファガ王国側と違い、麓に街道はなく、人の姿も見えない。ようするにサムワ王国の北側は未開の土地のようだ。ここからは北西に向かいながら魔物の山の中腹あたりで西に進路を変えてみよう。
ついでに魔物探知、まあ魔物の魔石を対象にした探知なんだけど、それも発動開始する。まだほとんど魔物が感じられないのは、ファガ王国との国境に近いから、結界守の村の結界範囲なのかもしれない。結界が切れた所が勝負時だ。何の勝負かわからんけども。
あ、そういえば家電量販店でなんと小型デジタル風速計と2kmまで測れるレーザー距離計なるものも入手した。風速計は秒速、分速、時速と切り替えができるので、エレナのように暗算ができなくともおおよその飛行速度はわかる。外に風が吹いていれば、そこから差し引いたり足したりしなきゃいけないだろうけど、おおよそでいいでしょ。距離計は双眼鏡タイプ。距離計としては今は使い道がないけどなんとなくかっこいいので買ってしまった・・・。双眼鏡としては活躍すると思う。おそらく。
時速50km。これくらいが周りの景色を楽しみながらも地上の変化を見落としがないように飛行できる。慣れればもう少し速度を上げても問題ないだろうけど、時速300キロとかだとちょっと考え事をしていただけで数十キロも進んでしまうからなぁ。
魔物の山の中腹あたりは、元魔物の島とか、結界の向こう側ほどではないけれど、かなりの数の魔物が生息しているようだ。こんなに沢山いて、食糧とかは大丈夫なんだろうか。たとえば魔物ではない動物が草食の場合、同種の魔物も草食なのかなぁ。これは魔物図鑑、またじっくり読まないとだめだな。
西に進むにつれ、すこしずつ魔物の密度が薄くなっている。これは結界範囲を超えたのかもしれない。密度は薄くなっているけど、南側での反応が増えているからね。もう少し速度を落として目視してみるか。
速度を時速30kmに落とし、高度もだいたい20mくらいまで下げる。早速距離計が役に立ったよ。スマホの高度計は気圧で測るやつだから、山の中腹では地上からの距離は分からなかったけど、レーザー距離計なら対象物に対して距離が測れるから。でも、双眼鏡タイプだから、地面が近くに見えて実用的ではなかった・・・。今度違うタイプのも買おう。
空から見る魔物たちは、別に普通の動物と変わらない。おそらく近づけば普通の動物の数倍の大きさだったりするんだろうけど、見たところ積極的に争っている形跡もないし、人間の国側とけっこう棲み分けができているのだろうか。
ん?なんだか山の中腹に平地のような場所があるな。木々は生えているから平原か。高原のような感じだけど、高原は平らな山頂ということを聞いたことがあるから、この山の中腹の場合なんて呼ぶんだろうか。人為的なものではなくて自然の地形なんだろうけど、結構険しい山の中腹辺りにこんな場所があるんだなぁ。
距離は距離計の計測範囲外なので速度を上げて平原に向かう。時速100km程度で飛んで10分ほどで到着した。長辺10km以上、短辺は3kmくらいある平地だけど、木々が邪魔で地面はほとんど見えない・・・あ、一部草原になっているところがあるから、あそこに降りてみよう。
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