第100話 異世界周遊の承認?
王宮の会議室。まだ来るのは2回目だけれど、ここが一番安心して転移して来られるかもしれない。今日も待っているのは国王様だけだったし。
茜さんとスベトラ、初対面の急造タカムーラファミリーは順に国王様に挨拶をする。そういや国王様の名前って・・・そうかオーグ様だね。国王様の自己紹介を横で聞いてなんとか思い出したよ。珍しく茜さんも緊張しているようだ。
僕は逆に、国王様とアート様と話すときは緊張しない。むしろ話に突っ込みを入れることさえできるかもしれないくらいになぜか馴染んでいる。実は僕、オッサンと相性がいいのだろうか・・・。そういえば斎藤のおっちゃんともけっこう気安く話せるよなぁ。ようするに気遣い無用?というか、国王様もアート様もサシャさんもタカムーラファミリーの説明簡単に受け入れすぎだろう。姉ひとりに妹ふたりが一瞬にして既成事実ですか・・・。少しは疑えよ・・・。
さて気をとり直して、まずはエレナとスベトラの学校入学の相談からだ。
「以前にも少しだけ、この国の教育についてお聞きしたと思いますが、今回はですね、エレナとこちらのスベトラを学校に通わせたいと思ってまして、その王都にある学校についてお聞できればと思っています。」
「そうか。エレナ嬢は18歳、そしてスベトラ嬢は16歳と言っておったな。それぞれ読み書きは問題ないのか?」
「はい。むしろ頭はいい方だと僕は思っています。読み書きと計算もできますし。」
「ふむ、そうかなら問題ないな。ところでふたりは何を学びたいのだ?」
「あ、あの・・・わたしは・・・・」
エレナもスベトラもしどろもどろだ。そりゃそうだ、自身にとっては昨日今日沸いた話だし相手は国王様だからね。お、茜さんがさっそく間に入った。緊張してたのでは?
「国王様、ちょっと待っていただけますでしょうか。私たちはまだ、どのような学校があり、どのような教育がなされているのか詳しく調べてはおりません。まずはそれぞれの学校についてお聞きした後に、彼女たちと話し合うつもりですの。」
うん。その通り。適当に選んではせっかく入った学校が面白くなかったり、自分にとって必要な教育が受けられなかったりと、本末転倒なことになってしまう。このあたりは、僕と違い学業や資格取得に精通している茜さんに任せよう。というか、もう全部任せている気がする・・・。一応一言くらいは僕も何か言っておこう。
「国王様、どちらかというとまずは学校を見学して、それぞれの学校について理解した後に選ぶということにしたいですが良いですか?」
茜さんと同じこと言ってるだけなんだけどね。保護者として茜さんに学校を見て貰えば最良の選択になると思うよ。僕よりよほど学校生活については詳しいと思うし。
「わかった。そのように手配しよう。それで、エレナ嬢とスベトラ嬢はどこから通うのかね。それとアカネ嬢、あなたは先ほどアタール君の姉と言っておったが、あなたも一緒に通うのかね?」
え、もう通うの前提?学校側が入学拒否したり、入学試験に落ちたりとかはないわけ?で、アカネ嬢って・・・嬢って何歳まで言うんだろうね。16歳も25歳も一緒くたとかないわー。あかねさんごめんなさい、肘みぞおちに入ってますから。障壁無かったら、悶絶してますから。
で、肝心の通う事前提の話を聞くと、なんとタカムーラ家の威光が既に王都には浸透していて、希望すればどの学校でも学ぶことができるそうだ。もちろん読み書きや計算をできることが必須の学校はあるが、まあそのあたりは二人は問題ない。そして、どこから通うかか・・・。もうアート様のご家族には転移知られてるからいいかな。
「えっと・・・どこからかというと、サルハの街からですかね・・・。もしくは例の島のログハウスから・・・。」
なんでみんなそんな目で見るの・・・。あ、アート様のご家族はなんか開いた口が塞がらない感じですか・・・。
「「「転移魔法か?(なの?)・・・。」」」
「いや、違いますよ。空間接続魔法です。」
言葉で説明するのは面倒だから、まだ空間接続魔法を付与していない複製した扉をインベントリから出し、会議室の壁に仮設したあとこれも複製した魔力チャージの魔石を埋め込み扉に空間魔法を付与して、ログハウスに接続する。普段は繋ぐ側にもドアを用意するけど、今回はこちら側だけ。だから閉じるときには気を付けなければいけない。そのあたりの実験をまだしてないから・・・。ケーブル通すときみたいに、ポッカリ穴が開いてるのかな。突然魔力切れで体が真っ二つとかならないよね・・・。
「どうぞ、こんな感じです。」
僕は念のため開いた扉を抑えたままのログハウス側からみんなを招く。それぞれエレナ、スベトラ、そして茜さんは何事も無いように普通にこちらに移動してくるけれども、他の方々は恐々という感じでログハウスのリビングに入ってきた。扉を閉じると・・・、あ、扉が消えた・・・。やっぱり双方向に設置しないと不味いな・・・。瞬時に会議室に転移して扉は回収。皆はリビングや窓の外の景色に気を取られているから気づかれていない・・・?いや、茜さんは気づいてるね。
「ここは確かに以前来た家ね。」
サシャさん、そうですよ。ホワイトボードもテレビもあるからね。ここ以外にそんなものが置いてあったら、むしろびっくりだよ。いや、僕以外にももし地球から来た人が居たらありえるのかな。異世界周遊のテーマにはそのことも追加しておこうか・・・。
「それでこれはどういう魔法だ?転移魔法ではく、空間接続魔法とはどういうものなのだ。」
え、その説明が面倒だから、実演したのに・・・。だいたい魔法なのだから、そんなこと僕にもわからないし。やったらできた魔法のひとつでしかないんですよ。
「み、見た通りです。さきほどの扉に魔法をかけていて、その空間をこちらにつないだということで、魔法について詳しいわけではないので、それ以上のことはなんとも・・・。」
「はぁ、なんともものすごい魔法だな。伝説にだけ残っている転移魔法陣ではないのだな。」
なんだ、その転移魔法陣って・・・。いろいろな伝説が残っているんだな。そういう本とかも一度目を通す必要があるかもしれない。そうすれば魔法大全に書いていた、『出来ることはできるし、出来ないことはできない』というのも分かってくる気がするな。
「転移魔法陣というのもを僕は知りませんが、その魔法陣ではありません。普通に僕の魔法を付与しただけです。そして今の扉は一方通行で、戻るときは転移になりますが、実際に設置するときには、両方に扉を設置して双方を繋ぎますと、いつでも行き来できるようになります。魔力がない方でも大丈夫なように、魔力チャージの魔石も付けています。」
なんかサシャさんの目が怖い。睨まれているというより、あれは新発見したときの研究者の目だと思う。
「アタールくん、それって以前の銀色の魔法石よね。」
「はい。というか僕が魔力チャージすると、なぜかみんな銀色になってしまうので・・・。」
サシャさんがさらにいろいろ聞こうと僕に質問をぶつけてくるが、理論立てて説明はできないのでしどろもどろになっていると、国王様とアート様が間に入ってくれてなんとかサシャさんからの追及は免れた。それよりも、通学のことですよね。
「とまあ、これを王都のどこかに借りる家とここに設置して、通学することになると思います。」
「アタールくん、ということは既にサルハの街とここは繋がっているのか?」
アート様か。まあ、気づきますよね。さっきサルハの街かここから通うって言ったから。結局サルハの家とログハウスの扉についても説明はしたが、設置場所がプライベート空間なので、実演はご遠慮させていただいた。日本側なんて茜さんの部屋だし。
「「余(我)も欲しいのう。」」
いや、あげないから・・・とも言えず、今後設置場所を吟味したあとに設置することを約束させられた。ただしなぜか茜さんが交渉役として契約書を作るという。なんだかいろいろ話が進展してしまっているけど良いのか?僕不在とまではいわないけれど、ここのところ茜さんがいろいろまとめ役になっているんだが・・・。まあ、そのほうが間違いないかもしれないけど。
とにかく、学校の件も含め、王都での転移場所その他もろもろ、当事者同士でお話していただくことにした。その契約やら条件については、契約関係に明るい茜さんに一任。ぼくはいよいよ周遊の話に入る。なぜかログハウスのリビングで。
「さて皆様、今日の相談はエレナとスベトラの学校の件だけではなく、ぼくがこの世界を周遊するという話を聞いて頂きたく集まっていただきました。」
「ほう、我がファガ王国だけではなく、他の国にも行ってみるということか。よいではないか?」
「はい?」
ん?反対されるかもしれないと思ってたんだけども。なんだかどちらかというと推奨するご意見を国王様をはじめとしてアート様やサシャさんからもいただいた。何故だ・・・。
「「「だって今と変わらないではないか(もの)」」」
反応がエレナやスベトラと同じだった・・・。僕ってそんなに色々な所をフラフラしているように見られているのか。茜さんやエレナ、スベトラはもうアート様のご家族と一緒に別グループを作り、ダイニングテーブルで紅茶やスイーツを出してお茶会を催している。めっちゃ楽しそうだ。
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