雪が降る前に
「雪が降る前に会いましょうね」
そう彼女は言い残し、よく晴れた夏の日に家を出て行った。やけに清々しい笑顔を浮かべていた。
彼女が家を出て行ってから、私はカーテンを常に開けっ放しにするようになった。「換気だよ」と言いながら、煙草を飲みながらニヤッと笑う彼女を思い出しながら。
山が紅く燃え、山が茶色に染まった。徐々に白くなっていき、完全に閉ざされた。徐々に温度が上がり、空から太陽が覗く日が増えた。路面が見え始め、木々は葉をつけ始めた。
虚ろな顔で仕事をし、家に着くと、揺れるカーテンを見ながら煙草を吸い、酒を飲む毎日だった。もう、帰ってこないだろうと諦めがつき始めた。
玄関の方で、小さな何かが落ちる音がした。アルコールで反応が遅い身体を引きずり、玄関へ向かった。
電気のスイッチを押すと、見覚えのあるものが落ちていた。彼女が好んでいた煙草。
忘れちゃいけないのか、いったいどこにいるのか、これはどういう意味なのか。考えていると涙が溢れた。情けないくらいに大きな声で大泣きをした。
忘れられるわけがない。でも、どうすればいい。と魂の叫びが。
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