星を掴めよ

 祖父は言った「星を掴めと」おそらく祖父は、夢を諦めるな追い求めろという意味で言ったのだろう。だが、他の意味が込められている気がした。

 祖父が急死し、通夜の帰り、私は夜空へ手を伸ばした。何かに導かれるよう、近所の山を登った。母から電話があったが、「少し風に当たりたい」とだけいい、まっすぐ山を登る。

 山の頂上に生えた木のうち、登りやすそうなものを選び、木に登っていく。天辺の枝に腰掛け、星が一面に咲いている夜空に手を伸ばす。祖父が言っていた意味を知りたいと願いながら。

 木以外の何かが手に当たる感触があり、見ると、紙が結ばれている。紙を解き中を読むと、


『星は掴めたか? 時には冷静になり、普段行かないところで深呼吸するのもいいんだよ。わかったかい孫よ? さてここでじいちゃんからの連絡だ。なんでこの木に紙が? とおもっていることだろう。これは、全ての木に結び付けられている。じいちゃんは頑張ったよ。多分もう死んでいるだろうが、最期に褒めてくれ。そして孫である君のこれからの人生が豊かで落ち着いたものでありますように』


 読み終わる頃には涙が溢れていた。地面に落ちていく涙が煌めいている。落ちる涙を手で救う。


「じいちゃん星を掴んだよ。頑張るね」

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