青い硝子と
深夜の路地を奥へ奥へと足を進める。夜の飲み屋街の喧騒と明るさが嘘のように、暗く暗くなっていく。僕は人が嫌いだ。誰も来ない場所に行きたい。会社の先輩にははぐれたと嘘を吐き、僕は路地の奥へ歩く。
ふと、視界の端に見えたものに気を取られる。薄い暗がりの中に、海のような青い硝子が浮かび上がるように存在している。
何かの店のようで、躊躇いながらも店の中へ。小さくカランコロンと音がしながら扉が開く。
老婆と老翁が、煙管を吸いながらテレビを見ている。そのテレビもなぜか白黒。
「あら、お客さんかい? 珍しいねぇ? 迷い込んだ口でしょう」
「だろうだろう。じゃなきゃこんなところにこれない」
老翁と老婆が楽しげに顔を歪め、僕に語りかける。
「ここは昭和四三年で時が止まった場所。青色は我らの恩人が愛した色。昭和四三年を楽しんでいきなさい」
僕は意味を理解できないままに頷いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます