ただいまのあとは?

 疲れた体を引きずり、家に帰る。リビングの中央に置かれている机に座り、煙草に火をつける。紫煙を味わい、吐き出す。一日の疲れがほぐれていくような感覚に陥っていく。


「ただいまー」

「今日は早いね。おかえり」


 玄関の扉が開く音と同時に、嫁の疲れきった声が聞こえる。今日は早く仕事を終えたようだ。煙草を揉み消し、嫁に抱きつきに行く。

 嫁は疲れた表情を浮かべながら小さく笑い、冗談を言うように呟く。


「あなたは家に帰って最初に煙草に口付けするよね。悲しいなぁ。家に帰って最初に触れるのも、口を付けるのも煙草かぁ。煙草……愛されてるね」


 嫁の言葉に動揺した僕は、何も言わずに煙草を流しに捨てる。


「今日までの僕は忘れて? 明日からの僕は最初に触れるのは君だし、口をつけるのも君だ」


 そう言いながら僕は、嫁の腰を引き寄せ口付けを交わした。

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