君とまた結ばれたくて

 死と同時に存在は完全に消滅するものだと思っていた。霊なんてものは、オカルト好きが嬉々として語っているだけなのだろう。と。

 だが、俺は死んだがまだ存在している。現世に対する未練が大きかったのだろう。そしてその未練は、彼女と同じ時を過ごしたい。というものだった。

 俺は死んでからすぐに彼女の家へ向かった。そして彼女の家に遊びに行った時の行動をそのまましていた。霊体というものは案外表の世界に干渉できるようで、小さなカップ程度なら持ち上げ運ぶことができた。

 彼女が帰ってくるであろう時間になると、俺はカップを移動させ、コーヒーメーカーの隣へ置く。淹れてしまうと冷めてしまうため、ホットが好きな彼女が嫌な顔をするために生きている頃からの癖だ。

 彼女が疲れ切った顔で帰ってくる。電気を点け、鞄をベッドに投げ捨てる。そしてキッチンへ移動し、彼女は涙を流した。


「死んだけど貴方はまだいるのね。私には見えないけど、貴方と居れて嬉しい」


 最後の方は泣きじゃくり声になっていなかったが、存在を示せたことに俺も涙した。


「泣き声が聞こえる」


 感極まれば、声も聞こえるようだ。


「ずっと一緒にいようや」

「貴方がそう言ってくれるの嬉しいわ。ありがとう」

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