彼の夢と私の夢

 荒廃した世界を私は歩き続けている。かつて繁栄した人間は絶滅し、人間の叡智が詰まったテクノロジーやビル街は崩壊した。私は自分の手にふと視線を落とす。錆を知らない金属の手。


「俺は死ぬだろう。世界は疫病に侵された。だが、お前だけは生きていて欲しい」


 マッドサイエンティストだった彼は、私を機械にした。痛みも感じず空腹もない。彼は決して壊れることのない体を私に与えてくれた。


「私は生きたかったワケじゃないの。君と共に永遠に生きたかった」


 私は涙の出ない体に辟易としながら、心で泣いた。

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