好きな天気は?
好きな天気は? と聞かれれば私は即座に答えるだろう。健常者であっても鬱々とするほどの湿度の高い、空一面を覆う曇り空と。
何も言わずに彼が失踪した日はもう10年前になる。その前日に私は彼とデートをした。デートの最中に彼は屈託のない笑顔で私に言った。
「俺さ、湿度高い曇り空が好きなんだよ。人類皆平等に嫌な気分になるだろ。心調が悪いの俺だけじゃねえなって思えるんだ」
なぜいなくなったかはわからない。私は彼を理解できておらず、知らず知らずのうちに苦しめていたのかもしれない。でも、今も彼を愛している。だから、彼が愛した曇り空を私も愛している。いつの日か、あの日の曇り空と似た天気の日に笑顔で帰ってくるかもしれないと信じて。
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