淡く消えやすい掌編小説集

影は何処に

僕は映画を観るのが好きだ。無名有名問わず、邦画洋画問わず。昔、好きな子が使っていると聞いたコーヒーメーカーでコーヒーを淹れ、煙草を咥えながらDVDを借りて見る。

　好きな子は高校二年生の時の夏休みに行方不明になった。あれから八年、未だ見つかっていない。

　映画に彼女が出ていないのは知っている。だが、彼女の雰囲気を、彼女が持っていた陽気とも陰気とも言えない独特な影を持った女優がいるのではないかと。

　今日も僕はコーヒーを淹れ煙草を咥え、彼女の影を画面の中で探し求めている。