夜の闇と女子高生
公園のベンチに座り夜空を仰ぎながら煙草を吹かす。暗い心から溢れ出す紫煙は、月も星も見えない曇り空に混ざっていく気がした。
「すいません」
左側から突然声がし、煙草を落としそうになりながら俺は振り向く。おそらく女子高生だろうか? 陽に焼けた褐色肌は夜に少し紛れるような気がするほど黒く。少し伸びている髪は首のところで後ろに跳ねており、目は猫の様な目をしている。俺が観察している間に目の前の女性は口を開き語り始める。
「アタシ毎日夜になると散歩してるんですけど、毎日お兄さんもここで煙草吸いながら空を見てるんでなんでかなぁ? と思っていて今日勇気を出して声をかけてしまって。驚かせてしまってすいません」
少し関西訛りの少女は申し訳なさげに目を伏せながら徐々に頭を下げながら声を出し最後は消え入る様な声になった。俺は火のついた煙草を静かに消しながら、口を開く。
「んー、特に意味はないかな。強いて言うならここで元カノに告白して元カノにここで振られた程度さ」
少女は猫の様な目を見開き「すいませんでしたそんなに深い理由があるとは知らなくて」とさらに頭を下げる。とても礼儀正しい子だと少し好感を持った。そして少女は上目遣いでおずおずと俺を見ながら、続ける。
「もし良ければアタシ毎日ここに来るから話し相手になってくれませんか?」
ここに来ると言った時少女は公園内をゆっくり見渡し、最後は俺に目を合わせる。唐突な申し出に驚きながらも俺は気がつくと頷いている。
「あぁ、毎日二一時から二時間くらいいるからさ。待ってるよ。俺には何もできないかもしれないけど話を聞く程度ならできる。俺も一人でタバコ吸ってっと寂しいしな」
少女は嬉しそうに猫の様な目を細め、笑みを浮かべる。「話し相手が欲しかったんです! ありがとうございます!」嬉しそうな顔とさっき公園を見渡していた時の顔を思い出し、申し出を受けた理由が分かった。佇まいと仕草が表情がとても元カノに似ている。
なぜか明日からの人生が輝くような気がしながら、左手を差し出し、少女に握手を求める。
「とりあえず今日はそろそろ帰るよ。また明日二一時から二三時の間においで? 俺で良ければなんでも話を聞くから」
硬く握手を結び少し格好つけて少女に背を向け煙草に火をつける。そして、火のついた煙草を持った右手を天に掲げ後ろの少女に手を振った。
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