第18話 女達の観察眼
葵がクラスに戻って来た。
「葵ちゃん。」
「?何。」
「晴美はなんか言ってたか?」
葵は龍二の心配そうな顔を見て、
「別に。何も貴方のことは言ってなかったわ。」
「そ、そうか。」
ホッとしたような、不安があるような顔をした。
「心配しないで。貴方のこと別に怒ってなんかないわ。」
「どうして、そんなこと分かるんだ?」
「・・・そうね。女の勘ね。」
放課後。
部活が始まった。
「何で付いて来るんだよ。」
「別に~。気分転換に校舎をうろうろしいてる感じかしら。」
「・・・ったく。」
体育館に差し掛かった時、葵は裕子と目が合った。
「・・・。」
「・・・。」
お互いの第六感が言っている。
こいつは敵だ、と。
「小関君部活始まるわ。」
「あっ、うん。ゴメン。ほら葵ちゃん。しっしっ。」
「ちぇ~っ。」
体育館入り口で葵は一人ポツンとなった。
「・・・。」
葵は一応裕子を観察した。
練習の時はしなかったが、休みの時、時々無意識に龍二の方を見ていた。
(やっぱりね。)
観察を終えた葵は帰った。
暫くして、重箱を持つ可愛い中学生が体育館に現れた。
言わずもがな晴美である。
そして晴美は体育館での女子バレー部を観察していた。
練習休みの時、時々無意識に龍二の方を見ていた。
(あの方かしら。)
そして、バレー部の部活が終わり、解散し、それぞれ帰った。
そして、龍二に近づく裕子の姿があった。校門を過ぎて曲がって歩いたのを見た後、後ろを付いてきた晴美が声をかけた。
「お兄様。」
龍二はぎくっとした。
「晴美??!」
龍二は何故かあたふたした。
「これは決して浮気ではなくてだな。」
「何をおしゃってるんですか?お兄様。私達兄妹ではないですか。」
「お、おう。」
「始めまして。私、小関晴美と申します。貴女様は?」
「私は女子バレー部の峰岸裕子です。」
「そうですか。お兄様とはただの部活仲間ですか?」
晴美は“ただの”を強調せず優しく言ったので、裕子の顔は赤面した。
「えっと~、そうですね。」
晴美は彼女の表情を見逃さなかった。
「・・・」
「今は話しやすい部活仲間と思ってます。」
「・・・そうですか。兄と仲良くして下さい。お兄様。私はお先に失礼します。」
「あ、あぁ。」
晴美はせっせと歩いた。
「・・・丁寧な妹さんね。」
「あぁ、晴美は僕の自慢だよ。」
晴美を見る龍二の目は少し寂しそうだった。
裕子はその目に違和感を覚えた。妹を見る目では無かったからである。しかし、彼女はその違和感の正体が分からなかった。
古風の妻 峪明博 @sakoakihiro
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