第16話 女達の警戒

裕子は少し警戒していた。

(えっ、それって・・・。)

「裕子パス!」

「えっ?あ痛っ。」

「どうしたの?裕子。今日はやけにぼーっとして。」

「ごめん。」

(今は練習に集中しないと。)

裕子はキリッとした。


部活終わり。

「あの、小関君・・・。」

「ん?あぁ、峰岸さん。」

「今日良かったら、一緒に帰らない?」

「ん?あぁ、途中までなら良いよ。」

龍二は徒歩、裕子は自転車だった。そして、校門にさしかかって、龍二は出て右。裕子は出て左だった。

(いきなり違うんかい。)

二人は同時に思った。

「じゃあ、僕はこっちだから。」

「えっ、あの・・・。」

「?」

「わ・・・私も今日はこっちの気分かしら。」

「そ、そうかい?」

二人は歩いた。

特に話す当てもなく、ただ無言に歩いた。


「そういえばさぁ、峰岸さん。」

「?」

「やっぱり君はバレーやっている姿は格好いいよ。」

「あ、ありがとう・・・。」

「スマッシュが特に良い。僕はあんなの打てないよ。」

(私のこと見てくれてるんだ。)

(あのユニフォームの太もものパッツン加減がたまらない。)

(嬉しい。)

(エロい。)

「あの、小関君・・・。」

「ん?」

「私・・・。」

「?」

「貴方のこと・・・。」

「・・・?」

その時、風がびゅっと吹いた。

「きゃっ。」

「わっ。」

そして風は止んだ。

「強かったね。」

「えぇ。」

「で、何が言いたかったの?」

「いいえ、何でも無い・・・。」

裕子は顔を横に振った。

暫く歩いていると、龍二の住んでいるアパートが見えてきた。

「じゃ、僕はここで。またね。峰岸さん。」

「うん。また。」

龍二は晴美の待っているアパートへ向かった。その背中を彼女は見ていた。


夜食事を終え、龍二はだらっとしていた。

「あ~、美味かったー。」

「直ぐ横になったら、牛になりますよ。」

「大丈夫だよ。まだ若いんだから。」

龍二は横になりながら、

「今日さ。部活の友達と歩いて帰ったんだよ。」

「へぇ。そうですか。」

「美人で可愛い子でさ、特に太ももが絶品でさ。」

「女子と帰られたんですか?」

「あぁ、帰り道が正反対なのに、こっちに来てくれてさ。」

「え、それって・・・。」

「ん?どうかしたか?」

「いえ、何でもありません。」

「全く、あの子の太もものエロさと言った・・・」

晴美は龍二の声は聞こえず、自分の思考の世界に入って、女の勘を働かせた。

そして、


「あの、あなた。」

「ん?」

「今度、バレー部の部活終わりの体育館に寄っても宜しいでしょうか?」

「あぁ、部活終わっているなら構わんが。どうした?」

「少し気になることが出来ましたので。」

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