第11話 葵。戦略開始
「おっはよー、龍ちゃん。」
「おぉ、似合ってんじゃん。」
「へへっ、そう?」
葵は少し髪を巻いていた。
相変わらず葵は龍二の机の上に座って脚を組み替える。
ついつい龍二は葵の太もも辺りを見て、頬を緩めてしまう。
「龍ちゃん。今なら格安で相手してあげよっか?」
葵は龍二の耳元で囁く。
「相手って、揶揄うなよ。」
「私は本気よ?」
葵の表情はマジな顔だった。
「僕には晴美が居るの知っているだろ?」
龍二も怒りながら言うと、
「晴美ちゃんの前でしどろもどろな姿を見せていいの?私が手取り足取り教えてあげるわ。」
龍二はドキッとした。
(えっ、それって・・・。)
龍二は葵とのレッスンを妄想した。
(いや、駄目だ。僕には晴美がいるんだ。)
「晴美ちゃんとはまだ出来ないでしょ?」
葵はさらに追いうちをかける。
「うっ。」
図星だった。
「どうしてそれを。」
「それは発育を見れば分かるわよ。」
葵は呆れながら言った。
「まぁな。」
「まあ考えてみてよ。」
「考えるまでも・・・。」
「年頃の貴方が何時まで我慢できるかしら。」
「・・・。」
チャイムが鳴った。
「あら、授業が始まるわ。」
「なぁ、葵ちゃん。」
「?」
「どうしてそこまでしようと思うんだ?」
葵はため息をつき、
「もう、鈍感なんだから。自分で考えなさい。」
昼休み。晴美が来た。
「待ちましたか。」
「いや、大丈夫だよ。」
龍二はぽーっとしながら言った。
「・・・。」
二人はご飯を食べ始めたが、龍二は上の空だった。
「・・・。」
晴美は龍二を見た。
(これは何かあったわ。)
ふと、晴美は視線を感じ振り向くと、葵がこちらを見て微笑していた。
「・・・。」
(これは何かあったわね。)
二人はご飯を食べた後、晴美は龍二を廊下に呼んだ。
「あなた。何を吹き込まれたか知りませんが、気をしっかり持って下さい。」
「分かっているよ。」
「いいですか、あなたは直ぐ他の女性に目が行くんですから。気を付けて下さい。」
「学校ではお兄様だろ?」
「・・・。」
「分かったから、お前はクラスに戻れ。」
「・・・、分かりました。では自分のクラスに戻ります。」
晴美は重箱を持ってすたすたと帰った。
龍二も自分のクラスに戻った。
龍二は年頃の男子。妄想はしてしまう。特に授業中は捗る。
(「あん、駄目よ。龍ちゃん。」)
とか、
(「そこはもうちょっと優しく・・・。」)
とかである。
龍二はぼーっとしていると、
「・・・関、関。」
龍二はハッとした。
「小関!」
「はい。」
「当てたんだけど。ぼーっとするな。」
先生が龍二を叱った。
「済みません。」
放課後。葵が龍二の所に来た。
「何考えてたの?」
「別に。」
「ふーん。今からどっか行く?」
「部活だから行かない。」
葵はむっーとして、龍二はクラスからさっさと出て行った。
(「あなたは直ぐ他の女性に目が行くんですから。気を付けて下さい。」)
「・・・。」
(分かってるよ。くそっ。)
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