第3話 互いの気持ち

晴美は二人分の布団を敷いて二人は床についた。

「あなたは直ぐ他の女性に目が行くんですから。気を付けて下さい。」

「仕方ないだろ?そういう年頃なんだから。」

「はぁ、思春期ですからね!」

晴美は龍二の耳をつねった。

「痛たた。それはお前もだろ?!」

「私は少なくとも、他の殿方を見たりしません。」

龍二の耳を引っ張った。

「痛いって、もう!」

「兎に角、私に任せて下さいな。」

「えっ?大丈夫か?」

龍二は晴美を心配した。

「まぁ、やってみます。お休みなさい。」


後日。葵の下駄箱に手紙が入っていた。

「えっ?もうラブレター?」

周りの女子達が言った。

「まさか~。差出人は小関。龍二かしら?何々、放課後体育館裏に来られたし。いやに達筆ね・・・。」


放課後。体育館裏に葵が来た。先に待ち構えていたのは中学生らしき女子だった。

「お呼び立てして済みません。」

「良いのよ。貴女は確か。」

「はい、小関龍二の妹になっております小関晴美でございます。」

「そう。貴女ね。で、用とは?」

「貴女は、彼の小学校時代の友達だったそうですね。」

「えぇ、そうよ。3年間だけね。」

「良くたった3年間の間の男子の名前を覚えてましたね。」

「まっ、龍ちゃんとはよく遊んでたからね。」

「・・・成る程。学校だけですか?それとも外でも?」

「まぁ、偶には外でも遊んでたかしらね。龍ちゃんから誘われてたから。」

「ほう。そうですか。」

晴美は少しぷくっとした。

「彼の許嫁の話を知っているそうですね。」

「よく知っているわね。遠い親戚なのに、そこまで筒抜けなのね。」

葵は笑いながら言った。晴美は無言になった。そして葵に言った。


「葵さん。貴女は彼のことを友達と思ってますか?」


葵はぴくっと唇を引きつった。

「どういう意味かしら?」

「そのままの意味ですよ?ただのお友達と思っているか、と聞いているんです。」

葵は無言になり、笑わなくなった。

「・・・。」

「そうですか。無言ですか。言えないんですね。」


ありがとうございましたと、言って晴美は去ろうとした。その時、葵は晴美に言った。

「待ちなさい。」

「?何でしょう。」

「貴女こそ、彼のことどう思っているの。」

「私ですか?私は・・・。」


暫くして、龍二達の自宅にて。

「ただいま。」

「お帰りなさい。もう少しで料理出来ますよ。」

「おぉ、そうか。で、どうだった?」

「そうですね。貴方は、彼女を少し警戒しすぎじゃないですか?」

「そ、そうか?」

「さっ、もう料理でしますから、机出して下さい。」

「はい。了解。」


一方、葵の家。

「葵、料理出来るわよ。降りて来なさい。」

「分かってるー。」

彼女は晴美の言葉を思い出した。

(「貴女こそ、彼のことどう思っているの。」

「私ですか?私はかけがえのない大切な人と思ってますよ。」)

「かけがえのない大切な人か・・・。宣戦布告ね!」

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