海斗の選択

 翌日、私は小さな妖精の姿であの岩場へと訪れていた。


 ひょっとしたら海斗が現れるかもしれないと思ったからだ。


 余計なおせっかいをせずに、私の虜にしてしまえば良かったと思ったりもするが、やはり本心から添い遂げる事が幸せなのだと思う。そういった意味では私は海斗にふさわしくない。


 そんな事を考えていると海斗が現れた。付き合い始めた彼女、心愛を連れて。


「ここで不思議な女性に会ったんだ。僕は彼女に勇気をもらった」


 いや、そんな大層なものじゃないと思う。私は筆おろしをしただけだ。


「夢のような出会いだった。彼女と出会って僕の心が晴れていくのを感じたんだ。女神さまのような人だった」


 重ねて言うが筆おろしをしただけだ。その目的が我らの国を救うためだとはいえ、やっていたことはどこぞの悪魔サキュバスと大差がないぞ。


「ねえ。綺麗な人だったの」

「ああそうだね」

「少し妬けちゃうかも」

「大丈夫。僕の心は心愛一筋だから」

「うん。じゃあやろう」

「ああ」


 二人は手をつないで鏡の門があった場所へ向かって礼をした。


「陽子さんありがとう」


 その一言は私の胸に届いた。


 まあ仕方がない。

 ああしてカップルが誕生すれば、また次の世代が生まれてくる。恋仲を取り持つことも我らの国を繁栄させる手段の一つであろう。


 私は海斗の事は諦めた。次の獲物を探すとしよう。

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