★妖精の国ハートランド

 私たちはハートランドへ来ていた。

 そこは常春の世界。


 のどかな里山と草原と色とりどりの花が咲き乱れる楽園。


 男よ。

 若い男よ。


 しかも童貞ですって。

 誰が最初?


 もちろん女王さまよ。

 二番目は……。

 三番目は……。


 周囲がざわめいている。

 節操がない。海斗に聞こえたらどうするつもりなんだ。


「ここは?」

「妖精の国よ。名はハートランド」

「誰もいないね」

「沢山いるわよ」

「見えないんだけど」

「みんな恥ずかしがりやなのよ。貴方の事が気になって仕方がないんだけど姿は隠したままなのよ」

「それは喜んでいいのかな」

「いいと思うよ。お茶にしましょうか」


 見慣れた自然の風景なのだろう。海斗は特に驚きもせず落ち着いていた。

 草原の中にポツンと東屋あずまやが建てられていて、その内側に椅子とテーブルが設置してある。


 私はそこへ座り、海斗は私の向かい側へ座った。

 マミヤがお茶とお菓子を持ってきた。


 今日は紅茶。お菓子は外郎ういろうだった。砂糖とミルクのポット、そして輪切りにしてあるレモンが添えられている。


 私はレモンティーに。海斗は砂糖をたっぷり入れたミルクティーにしていた。


「ねえ海斗。恋人はいるの?」


 いきなりだけど不躾ぶしつけな質問をした。この返事はわかっている。


「い、いないよ」


 恥ずかしそうに、でもすぐに答えてくれた。コレは想定内。童貞スカウターが激しく反応するんだから当然でしょう。


「なら好きな人はいるの」


 海斗はやや躊躇していた。でも答えてくれた。


「いない……と思う」


 やや含みを持った言い方。

 もしかしたら……。


「いるのね」


 私は単刀直入に言った。


「いない……いや、いるのかな」

「だれ? 海斗の好きな人って」

「それは……」


 言い難そうだった。


「それは私かな?」


「違う!」


 即否定された。


「ごめん。陽子ちゃんが嫌いってわけじゃないんだ。気になるしむしろ好きかもしれない。でも、他に気になる娘がいるんだ」 

「そう。告白はしたの?」

「まだです」

「もしかしてあの溺れたって子?」

「……そう……です」


 なるほど。

 自分が気になっていた娘が溺れたのに気づかなかったんだ。だから自己嫌悪している。でも、彼女への想いは募るばかり。


 これは何だか悔しいぞ。


 私は立ち上がって海斗の手を握った。

 手を引かれて海斗も立ち上がる。

 私は海斗に迫る。

 海斗は後退るのだが背は東屋の柱にぶつかった。


 私は海斗に体を押し付け、海斗の唇を奪った。

 そして海斗の右手を掴んで私の胸に当てた。海斗はぎこちなかったけど私の胸を触り始めた。そのタイミングで唇の隙間から舌を差し入れる。海斗は一瞬目を見開き動揺していたのだけど、眼を瞑って私の舌を受け入れてくれた。

 舌と舌が絡み合う甘美なキス。100年ぶりの興奮が私の身を包んでいく。


 私は海斗を草原の上に押し倒した。赤いスウェットスーツを脱いで海斗の上にまたがる。


 海斗はされるがままだった。私は海斗の体を存分に味わい、彼の精を何度も飲み干した。海斗はいつの間にか意識を失っていた。

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