海斗の理由
「僕はね。監視員のバイトをしてたんだ。去年も今年も」
「そこの海水浴場で?」
「そうだよ」
「何か事故でもあったの?」
「一ヶ月くらい前にね。女の子が溺れちゃったんだ」
「そうなの」
「僕はそれに気づかなかった。ぼーっとしてたんだ」
悔しかったのだろう。
海斗は両手を握りしめ、そして歯ぎしりをしていた。
「その子はどうなったの?」
「近くにいた大人が助けたんだ。無事だったんだけどね」
「なら良かったじゃない。海斗の責任じゃないわ」
「いや。僕が最初に気づかなくちゃいけないんだ。それを怠ってた」
海斗は真面目で責任感が強かった。
でもどんなに頑張っても事故は起きるもの。しかし、自分が許せないようだ。
「それで一人なの」
海斗は頷いた。
「僕は人が沢山いる海が怖くなったんだ。でも、一人なら何ともない。だから毎日ここに来ているんだ」
「一人じゃ寂しくはなかった?」
「うん。でもね、陽子と二人ならすごく楽しい。一人より二人の方がずっといい。そう思ったよ」
これはチャンスだ。
海斗をお持ち帰りできるかもしれない。
そして私に残された時間はあと二日しかない。
「ありがとう。そう言ってもらえると凄く嬉しいよ。お礼に秘密の場所へ連れて行ってあげる」
海斗は少し
この周辺は全て知っているのだろう。自分が知らない場所なんてないって顔をしていた。
「秘密って」
「そう秘密。海斗が絶対に行った事がない場所です」
私は右手をかざして鏡の門を呼び出す。
銀色をした円形の鏡。
直径は2mもある鏡。
それは陽光を反射して眩く輝いていた。
私は海斗の手を握った。
そして海斗は頷いてくれた。
私たちは二人で鏡の門をくぐった。
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