ツンデレ女児
「マミヤ。あの情報は間違っていたようだ」
「
「ビキニ姿で出刃包丁を持っているとサイコパスにしか見えないらしい」
「そうでしょうね。でも、それこそがヤンデレなのですが」
「つまり、ヤンデレは広く寵愛を受けるものではなかったのだな」
「そうでございます。一部の変態が好む奇天烈性癖でしょう」
「うむ。では次のプランを実行しようと思う」
「ツンデレ女児ですね」
「ああそうだ。今度のモデルは暗黒星雲原作アニメ(注1)の主人公だ」
「金髪碧眼ツインテール……これは色物ヒロインの典型では……」
「童貞カウンターが最高値を示す男を捕まえる為だ。色物である方がインパクトが強くて効果的だろう」
「
「ああ」
私は持てる魔力を振り絞って私の体を再構成していく。
巨乳の熟女から貧乳の女児へと。
肌は白く、髪は黄金に、瞳は青へと。
「女王さま。完璧でございます」
「うむ。かなり体が軽くなったな。では行ってくる」
私は鏡の門をくぐる。
そして人間の世界へと躍り出た。
まずは童貞スカウターが激しく反応している同年代の男児に声をかけた。
「ねえ君、私と遊ぼうよ」
その男児は私の顔を見ると途端に硬直した。
ひきつった顔で愛想笑いを浮かべていた。そしてこわばる口を何とか動かしてか細い声で答えた。
「ごめんなさい。僕、帰らなくちゃ」
その男児は一目散に走って行った。
オカシイ。
この
そしてまた童貞スカウターが激しく反応した。
目の前には何日も入浴した形跡がない汚い男がいた。ツーンとすえた匂いが鼻を突く。
「あのう。ララたんでちゅか? これは僥倖。僕と握手してくだちゃい」
右手を差し出す汚い男。その長髪にはハエが飛び交い、衣類の上にはゴキブリがチョロチョロと蠢いているではないか。
いくら童貞スカウターが激しく反応したとしても、この不潔な男だけは勘弁してほしい。しかし、我らの世界を救うためにはこれを耐え忍ぶ必要があるのか。
おお、神よ。
この試練はいささか難易度が高いと思います。
私は鼻と口を押えていた。異臭の刺激で涙さえ出てきた。その手を握れば世界は救われるのだ。私が手を握ろうとした瞬間、先ほどの警官が現れた。もちろん童貞スカウターの反応が薄い二人組だ。
「児童略取の現行犯だ!」
「不快禁止条例違反もな。クソ。なんて匂いだ」
汚い男は連行されていった。
助かった。
私は心の底から安堵した。そして一言。
「助けて欲しいなんて少しも思ってなかったんだから。ありがとうなんて言わないんだから」
ツンデレっぽい台詞を吐いてみたが、何故か決まった気がしなかった。
その後も何人かに声をかけたが、皆逃げるか土下座して許しを乞う。
これは失敗だ。
私は鏡の門を潜って元の世界へと戻った。
注1:ララ・アルマ・バーンスタイン。私の処女作「俺の愛しいアンドロイド」に登場する見た目は小学4年生で、泣く子も黙る帝国最高戦力。アニメ化云々は嘘ですから信じちゃダメ。
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