プロローグその②

 人間が我らを信じなくなった。

 つまり、我らの国を救うためには人間を連れてくるしかない。


「女王さま。本当に行かれるのでしょうか?」

「勿論だ。私は我らの世界を救うべく男子を連れて来よう」

「男……」

「マミヤ。どうしたのだ?」

「いえ。何でもありません。百年ぶりの男子に心が躍ってしまうのです」

「それは私も同じだ」

「女王さま……」

「ところでマミヤ。アレは用意できているのか?」

「はいここに。秘密兵器でございます」

「ふふふ。これがあれば落とせる可能性の高い男を選別できる」

「はい。私達の魔力を結集してこしらえました」


 それはオーソドックスな銀縁眼鏡だった。

 私はそれを手に取ってかけてみる。


「マミヤ。反応がない」

「女王さま、それは男にだけ反応します。経験の少ない男、即ち童貞度の高い個体に激しく反応します。経験が十分な個体には反応が薄く、女性には反応しません」

「そうだったな。ここには女しかいない。反応するわけがないのだ」

「そうでございます。ではお出かけの支度を」

「分かった」


 私は自らの姿を人間の女へと変化させた。

 そして鏡の門をくぐり、人間の世界へと赴くのだ。

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