喋らない人
ジャックは喋らない。
特に喋れない病気という訳ではなく、喋らないだけなのだ。
ジャックは自分の声が嫌いなのだ。ジャックは筆談で会話する。
ペンとメモ帳を出せば、そういう病気だと勘違いした人が合わせてくれるので不便に思った事はない。
とある日、ジャックは散歩をしていた。
いつもの散歩のルートに工事中の看板がたてられているのを見ると、ジャックはどうせだし、今日は別の道でも歩いてみるか、と考えた。
しばらく歩き、森へ向かう。
森の奥に洞窟がある、という話を聞いていたからである。
ジャックは好奇心が強い。森の中は心がやすらぐ。
話しかけてくる人間がいないからだ。筆談をするのは非常に疲れる。
洞窟に着いたジャックは、こういうこともあろうかと用意していたペンライトを付け、つかつかと中に入っていく。
10 メートル程進んだところで、地震がおき、洞窟は岩で塞がれる。
ジャックは慌てた。これでは家に帰れない。
ジャックは叫び助けを求める。だがかすれ声しか出てこない。
普段声をあげないジャックは喋り方を忘れていた。
長く暗い洞窟の中、ジャックのかすれた声だけがこだましていた。
幻想郷 青空店長 @tencho_Reprint
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます