死神

私はごく普通の探偵だ。

殺人事件の捜査をするわけでもない、どこにでもいるような探偵。

そんな私にも弟子が出来た。仮にM としておこう。

M はとにかく覚えが早いのだ。あっという間にプロ並に成長してしまう程に。

それと、M は異常なほどの不幸体質なのだ。

歩けば引ったくりにあい、銀行にいけば強盗に出くわし、旅行に行けば連続殺人に巻き込まれる。

まるで金田一かコナンのようだった。そのイメージがピッタリだろう。

それをそのまま大人にした感じだ。

M が不幸体質で事件を引き寄せるから、と焦ることはない。

こういうものは大抵、普段共に過ごしている者は殺されないものだ。

そう思っていたのだが、つい先日の事だ。

M の相棒が旅館で殺されたらしいのだ。

犯人はあっけなく捕まったそうだが。

ここで一つ、不安が出来た。身近にいるものも殺される事があるのか、と。

そう思うと夜も眠れなくなる。

追い出すにしても、唐突にそういうことをすればまず間違いなく盗人か何かに殺されてしまう。

こうなったらやるのは一つしかないのだろう。

多少気は引けるがこれしかない。_______________________「死亡推定時刻は20 時40 分、ナイフで頭をメッタ刺しにされたのが致命傷と思われます」

「それで犯人は?」

「ええ、見つかりましたよ。おかしな男でして、M のせいで大勢が殺人に巻き込まれる。私も例外ではない。だから殺したのだ。これは慈善活動だ、とか言ってました」「こういうおかしな輩は尽きないものだな。それで、その犯人を突き止めたのは?」「彼ですよ。例のあの探偵」

「ふむ、こういう死神のように殺人に遭遇する探偵も尽きないものだな」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る