第2話

 そしてついにあきれ果てた従業員がついに聞いたのだった。


「ではあなたが希望する転生先はどんなところであなた自身はそこでどんな風になりたいのですか?」


ようやく暴れていたのをやめ語り出した。


「だから言ってんじゃん、わたくしはすべての音楽を生まれながらに奏でられる演奏家で楽器はなんでも弾けて、あー特にヴァイオリンの技術はめっちゃすごいことになってて作詞はもちろん作曲人を束ねる能力にも長けているから指揮者が基本だけど

あと人の上に立つことに向いてるからギルドの幹部でリーダーで監督で一番偉いやつでそれで絵も描けてすごいストーリーが泉のように毎日湧き出てきてそれを聞いた周りのイケメンの男の子が感動して卒倒して一目ぼれしちゃうんだけどでもわたくしは俺様系の天才肌だからそんなん興味なくてそのクールな俺様キャラで毒舌で言いたいことをはっきり言っちゃうからさらにさらにモテまくりで……」


「あぁーもう良いです、だいたいわかりましたから。資料によると前世ではアニメ関係の仕事に勤めていたそうですが」



「ちがーう!! わたくしは監督だったの、芸術作品のか・ん・と・く!! あと敏腕演出家で作詞家で指揮者もやってたよ、やろうと思えば作曲家もやれたしヴァイオリンも弾けたし料理人にもなれたんだけどね」


最初は笑いを堪えていた周囲の人間もだんだん40半ばまで生きてきた人間が大真面目に言っていることなのか?

と開いた口が塞がらない状態になっていたのだった……


「う~ん、こちらもできれば希望に沿ったものを提示したいとは思うのですがねぇ、資料によると生前のあなたのスペックでは正直かなり厳しいんではないかと……」


「黙れ畜生!! お前らオタクだろ、人の心ってもんがないのかよ?ふぎぃいいいいいいいいいいいいいいいい!」


また大声で叫びながら立ち上がって暴れ出しそうになり周りが止めに入る羽目になる……


しかたないので両手足は縛らせてもらうことにした。しゃべるたびに暴れられては困るので当然の措置ではあるのだが。


「感情が劣化してんだよお前らは、だからわたくしのすごさ尊さ気高さ崇高さがわからないの。どいつもこいつもバカばっかり。わたくし以外のやつらはみんなバカ、だから死んで当然なの。わたくしを認めないから当然なの。」


「はぁ……あなたも前の世界で死んだからここに来たはずなのですが……」


「上手いこと言ったつもりかオタクが! とにかく誰もが僕の素晴らしい才能と人間性を認めるまともな世界に転生させろって言ってんのこっちは。当たり前のことでしょ?」


「仕方ありませんねぇ、そこまで言うのなら案内してあげますよあなたが今おっしゃった世界に」


上司はため息をつきながら新たな資料を棚から取り出し広げだした。


そんな世界に本当にこんなのを転生させるつもりなのだろうか……!?

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