前世で婚約破棄された令嬢は簡単には転生しません!

ニート

第1話

 「いいえですからそういったことは不可能ですので……」


「はぁ? おかわいそうに、なんで、なんでですかー? あなたじゃ話にならないから責任者呼んでくださいよ~」


「あなたに取り次ぐことはできません!」


「え、だからなんでなんでなんでー?」


困ったものだ。悪質なクレーマーというのは仕事上これまで何度も出会ってきた、そしてマニュアル通りに対応してきたつもりだ。だが悪質なクレーマーがなぜ悪質なのかというと簡単なことでとにかくしつこいのだ。


規則でできない、不可能、無理と何度も告げているのにもかかわらずひたすらそれを聞かずに自分の希望が通るまでしつこくしつこく折れずに文句ばかり言うのである。上司にも相談したがこの手の輩は疲れてやめるまでひたすらマニュアル通りの対応を繰り返すしかない。当然会話など成立するわけがないのだが……


「だから何度も言ってるじゃないですかー、こちらはね、前にいた世界でオタクっていう気持ち悪い奴らのせいで人生狂わされて終わっちゃったんですってその責任取って下さいよー」


「あなたの資料を拝見させてもらったのですがあなたの行動にも十分すぎるくらい問題があるように思えるのであなたの輪廻転生は現状では不可能です、まず地獄に5億年ほど服役してそれからということになると先ほども申しあげたとおりでございます。」


「だからさー、それは全部オタクっていうわたくしのことをしつこく付きまとって攻撃してきたアンチなキ〇ガイどもが原因なの、俺は何も悪いことしてない、専守防衛しただけだから。あれだけ狂ったやつらだらけの世界に耐えて良いもの作ってきたんだから今度は俺TUEEEできてハーレムできて誰もがわたくしを崇め奉る世界に転生させてって言ってんの、こんな簡単なこともわからないのお役所仕事の税金泥棒さんには?」


「ですからあなたの前世での行動を精査させてもらった結果、どういう事情があろうとそういったことは絶対に認めることはできません!」


「ふぎぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」


バァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!


今度はついに近くにあったペンや書類、スティックのりやセロテープなどを投げてぶつけてきた。


「ちょ、ちょっと……」


「おいおい何だ、どうした……?」


やっと周りも事態を察してくれたのかこちらに注目し始めてきてくれたようだ、もっと早くなんとかしてほしかったのに……。


「ふぎぃいいいいいいいいいいいいい! なんでいつも誰もわたくしのことわかってくれないんだよぉおおおおおお!!」


「ちょっとちょっと君、良いから落ち着いて座りなさい!」


「ふぎぃいいいいいいいいいいいいいい! うるさいわたくしに指図するな、本当はわたくしの方が偉いんだからな、お前大学どこ通ってたんだよぅうううううううううううう!?」


老齢の上司がようやく動いてくれたもののこのキ〇ガイは収まるどころかさらに面倒なことになりそうだった。


「ちょっとみんな来てー!!」


中でそ知らぬ顔しながら面倒ごとをスルーしていた同僚もようやく出てきてくれたようである……。

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