第39話
〜二週間前〜
PAPA-RATは青山にある植松弁護士事務所にいた。
ここは主に民事裁判を専門としている事務所だが、全国の刑務所の慰問を担当しているのである。RATは様々な手を使ってここへ辿り着き、植松弁護士に連絡を取ったのだ。
「…で、お話しと言うのは?」
「はい。実は植松先生が刑務所への慰問へ力を入れていると言う事で、私達も是非協力させて頂きたいと思いまして…」
「ほぉ…、それは実に有り難い。ちなみにどの様なコンサートでしょうか?」
「はい、自分達が取り組んでおりますのはREGGAEと言う音楽でして…」
RATはこの音楽の素晴らしさ、メッセージという物を弁護士に話した。最初は半信半疑で話しを聞いていた弁護士も、徐々にRATの話しに引き込まれて言った。
「…それで、自分達は是非湘南少年刑務所へ行かせて頂きたいのですが…」
「そうですね…次回の湘南少年刑務所への慰問は1月なのですが、今回はもうアーティストが決まっておりますので、別の場所での出演をお願いします。」
「いや、あの…出来れば湘南少年刑務所へと…」
「…何故そこへこだわるのでしょうか?」
「…ええとですね、やはり若者の…」
RATは極力悟られぬ様に話そうとしたが、やはりそこは弁護士の方が一枚上手である。鋭く突き刺される質問に押され、遂にRATは観念した。
「実は…」
RATは遂にTOYの事を包み隠さずに話し始めた。植松弁護士は一部始終をただ黙って、目を瞑って聞いていた。
「…なので、きっかけはTOYなのですが、当日は皆本気でメッセージを伝えます。だからお願いです!どうか自分達にやらせて下さい!」
RATは椅子から立ち上がり、床に頭を擦り付けて土下座をした。そこまでする理由はただ一つ。TOYに会いたい、TOYにリアルなREGGAEを聞かせてやりたい。その一心である。
「…出来ません!
…本来ならばね。」
「…えっ?」
「まったく…あなたには参りましたよ。自分は弱くてね、そういうのは…。友情…歳を取るにつれて付き合いが多くなって忘れてしまいがちですが、とても大切な事なんですよね。
分かりました。1月の慰問ははあなたにお任せします。時間は約三時間、ただし…1つ約束して下さい。」
「はい…?」
「過激な発言は控えて下さいね。」
「…?」
「実は私も…結構COREなREGGAEファンなんです。」
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