第37話

優勝は、第四工場の〜君!


工場対抗カラオケ大会、稲本との約束を果たし俺は優勝した。



稲本のお陰で、俺は派閥が一切無くなった四工の工場長になっていた。工場に来て半年足らずで工場長になる事は有り得ない事らしい。実際工場の中の半数以上が俺よりも長く務めている人間だ。それだけBE-COREと稲本がしっかりと言い聞かせてくれていたのだろう。


やっぱり人は1人の力じゃ生きて行けないんだな。





翌日、待ちに待ったクリスマス。俺は朝からソワソワしていた。水元に変わって計算係になった高木が言ってきた。


「TOYさん、何か楽しそうですね!」


『高木、俺は決して楽しくは無い…幸せなんだ…分かるか?愛だよ、愛。』


「…あ…っと…」


『世の中は愛があれば平和になるんだ!ONE LOVEだよ高木…』


「…」


その時、工場の扉が開いた。


「1229番!面会だ!」



心臓が飛び出しそうになった。工場から面会室に行くまでの間、自分の足が自分の足じゃないみたいだった。…やっとだ。






やっとメグに会える





面会室に着き、ビックリ箱に入れられてしばらく立つと、俺の番号が呼ばれた。

まただ…話す事決めてあったのに…また頭が真っ白になっちまった。


扉が開かれると少し痩せたメグがいた。


「TOY…」


『メグ…』



しばらくの間、俺達は何も言わなかった。ただ、同じ空間にいれるだけで良かった。多分メグも同じなんだろう。


「…あ、そう言えばカラオケ大会…」


『うん…優勝したよ。』


「ほんと!?すごいじゃん!!何歌ったの?」


『…メグの好きだった…』



話しが始まると、今度は逆に止まらなくなった。まるで一緒に住んでいる時に寝るまで語り合ったみたいに。


「あはは…やめてよ本当に…あっ…」


『…ん?』


「このマフラー…」

メグは自分がしていたマフラーを指差した。


「クリスマスプレゼント…編んだの…」

ラスタカラーに編まれた毛糸のラインは所々歪になっていたが、それが逆に暖かそうだった。


「寒いと思うけど…中じゃこれ出来ないだろうけど…あの…」


『有り難うメグ…十分あったかいよ…十分…』


俺は歯を食いしばった。メグに涙は見せちゃいけないんだ。

「そろそろ時間だ」


無情にもタイムオーバーになった


俺は声には出さずに口だけで『愛してる』と囁いた


メグも声には出さずに「私もだよ」と返してくれた

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