第22話
第4工場の扉が開き、前回と同様に担当台の前に立たされた時、俺は驚いた。
第2工場の時とは違い、誰も俺を見る事なく黙々と作業を続けていたのだ。
「1229番、やる気はあるのか?」
これも第2工場とは違い、優しい口調で工場担当の親父は聞いてきた。
『はい、あります』
「じゃあまぁ頑張れや。。あっちで荷物整理して来い」
一礼をして担当台の前からロッカーの方へ行くと、そこには計算係と衛星係が立っていた。。
第2工場では一杯一杯であまり覚えていないが、確か計算係や衛星係は工場でもトップクラスの受刑者がやっていると聞いていた。
俺は前回の二の舞にならぬ様に気を張って近付いた。。
ロッカーに行き、衛星係の奴に一通り前回と同じ様な説明を受けた。
「…ところでお前、2工の杉本にケツ掘られそうになって半殺しにしたんだろう。ざまぁねぇな…俺も元2工で、あいつとは仲が悪かったんだ!お前俺の部屋に引っ張ってやっからよ。
うちは2工とは違ってやる事やってりゃシャリ上げも暴行もねぇから安心しろ。」
『はぁ…でも何でその事を…』
「はは…そうか、…この中にはハトっていってよ…伝書鳩から来てるらしいんだけど…色んな工場の奴がうまく他の工場の奴と情報交換してんのよ。。サラが2工の頭に飛んだって、今全工場で話題になってるよ…はは、お前はもう時の人だ。湘南少刑でお前を知らない奴はいない。」
『…はぁ』
俺は何て言って良いのか分からなかった。でもなんとなくこの工場ではやって行ける気がした。
作業は至って簡単。パソコンの中の配線をニッパーで切るだけ。内職の様なものだ。
作業を終え、部屋に戻ると、今度は6人部屋だった。驚いたのが他の人間が全員で俺の荷物を手伝ってくれた事だ。
一通り落ち着くと、工場の決まり等は適当に済ませて、俺の娑婆での話しをみんなは聞いてきた。
「…へぇ、レゲエ歌ってるんだぁ。俺も良く聞いてたんだよなぁ。」
「お前彼女の写真ある?見せろよ…うわぁ、すげぇ可愛いなおぃ…お前ムカつくなぁ…あはは」
…何かすげぇアットホーム。。俺はここまでの辛い経緯を思い出して泣きそうになった。
ずっと口を開かなかった部屋のトップ、工場の衛星係の滝川さんがここで口を開いた。
「お前歌やってたなら歌ってみろよ」
「あ、いいですね」
部屋長の意見は絶対。俺はDO IT MYSELFを歌った。
「…なめてんのかサラ]
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