第14話

「被告人、〜を求刑5年とする」


裁判長は紙に書かれたTOYの一生の大事件を、まるで読み慣れた作文を読むかの様にサラサラと読み上げた。


前回とはまるで違い、人が1人もいない静かな法廷。前回のPAPA-RATの一件で、傍聴が禁止となった為だ。


「被告人、判決前に最後に何かありますか?」


『いえ、ありません。与えられた刑を、真摯に受け止め、全うしたいと思います。』


TOYは静かに、落ち着いて答えた。しかし決して以前の様に投げやりとなっている訳では無い。前回の公判の時のRATの手の温もりが、TOYをそうさせたのだ。


それだけでは無い。初公判の後にメグから拘置所に手紙が届いたのだ。


TOYはそこでメグ宛てに書いた手紙が捨てられていた事、自分の事で親と絶縁した事、家を出て1人暮らしを始めた事を知った。


〜まだバタバタしちゃってるから、落ち着いたら面会に行きます。ずっと待ってるから、安心してね!~



メグより。



この手紙を読む度に顔がにやけ、同じ部屋の連中に真剣にひかれた。そんなの関係無かったけどね。


ただやはりやり切れなかったのは両親と絶縁した事に対しては申し訳無い気持ちで一杯だった。俺は頭の中にあるありったけの謝罪の言葉を並べてメグの両親宛てに手紙を書いた。まぁ勿論返事は無いけどね。


俺は求刑から判決の間にメグを友人から内妻へと登録を変えた。拘置所までは誰にでも手紙や面会が出来るんだけど、刑務所へ行くと身内と内妻しか駄目って事を弁護士に聞いたからだ。

本来三年以上同棲してないといけないらしく、一か八か出してみた結果それが通り、俺は自分の立場を忘れ久々に心の底から喜んだ。それをメグに手紙で教えたらメグも喜んでくれて、またハートが一杯の返事をくれた。

また同じ部屋の連中に気持ち悪がられたのは言うまでも無いよね 笑



もうここまで来ると俺は腹を決めていたんだ。弁護士に、求刑が4年以内だったら初犯だから執行猶予の可能性があると言われていたが、案の定それは叶わない夢に終わった。


でも不思議と恐怖や不安は無かった。


俺みたいな人間を待っていてくれる人がいる。それだけで十分だった。RATからは手紙で[ちゃんとリリックを溜めておく様に]と言われた。MOEASTからはパトワ語辞典が差し入れで送られてきた。OZIKIからはHな本が沢山送られてきた。


そしてメグは、メグ自身を俺に委ねてくれた。



十分だよ。

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