第15話
「被告人〜を懲役3年6月……未決90日とする」
傍聴席から深い溜め息が漏れた。この……の後が、ただし〜と続くと執行猶予で即日外へ出れると知っていたからだ。
俺は初公判とは違い、判決の日にはしっかりと傍聴席を見た。もうしばらく会えないブレジン達の顔を1人1人、しっかりと。
泣いている者、笑っている者、どういう顔をして良いか分からない者…
俺は1人1人に笑顔で、心から有り難うと、胸の中で呟いた。
視線の先がメグにたどり着いた時、メグは笑っていた。頬に涙の線を残しながら。
刑務官に促され、法廷を出ようとした時…
「POW、POW…」
声の先はやはりPAPA-RATであった。PAPA-RATはあの一件で傍聴禁止となっていたが、今回はスーツを着て、髪をぴったりと決めそこにいた。双子の兄貴の免許証でも借りて来たのだろう。俺は初めて見るPAPA-RATの死ぬほど似合わないスーツ姿を見て苦笑いをしながら一礼をした。
その瞬間…
「頑張れやぁ!お前は一生のライバルやで!!」
MOEASTがそう言ったのと同時に、我慢の出来ない仲間達がガンフィンガーを挙げながら1人1人TOYに労いの言葉を叫んだ。
「傍聴席!静かにぃ!!」
かき消された裁判長の声を合図に再び警備隊が出動し、危うく暴動になりそうになった…
『おぃっ!!』
俺が一言放つと一気に会場がシーンとなった。
…俺はゆっくりと手錠のかかった両腕を頭の上に挙げた。そしてゆっくりとその右手にガンを作ったんだ。このガンは俺達が、俺達を邪魔する者だけに放つ物だ。
俺はその手を、またゆっくりと横にいる刑務官のこめかみに当て、心の中で撃ち抜いた。そして、今自分が出せる精一杯デカい声で叫んだ。
『RESPECT!!!!!!!!!!!』
会場がどうなったかは残念ながら分からなかった。俺は叫んだ時もう後ろを向いていたから。皆に涙は見せたくなかったんだ。別れに涙は禁物だぜ…って訳では無いけど、今の皆に涙は見せられなかったんだ。皆の為に、メグの為に、何より自分の為に…
法廷を出て元の部屋に戻される途中、さっき俺がこめかみを撃ち抜いた刑務官が目頭に涙を溜めて言った。
「いい仲間達だな…」
こいつらも人間なんだなと思ったよ。
それから弁護士に控訴するかと言われたが俺は即座に断った。もう気持ちは前を向いていたからだ。
さぁ、行くか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます