第12話

法廷にTOYが入った瞬間にざわめきが起こった。それはそうだ。刑務官2人に手錠にかけた紐を持たれ入ってきたTOYの顔は原型が無い程形が変形していたのである。オマケに約三ヶ月の中での生活で5kg程痩せたTOYの頬か痩け、生気を失っていた。


TOYは傍聴席に見向きもせず、用意されていたパイプイスに静かに座った。


「…それでは、被告人〜の公判を開始致します〜」



まずは裁判官が一通りの文を読み上げた後、裁判官の真ん前にある場所にTOYが立たされた。


「…以上の内容に間違いはありませんか?」


『…はい』


普段声がデカくてウルサいと散々言われていたTOYが、静かに、今にも消え入りそうな声でそう答えた。


その後検事がTOYに嫌がらせの様な質問をしている最中も、TOYはただ、下を俯いたまま頷いているだけだった。

TOYが元の席に戻された後、裁判官が弁護士に聞いた。


「被告人弁護士側からの召喚はありますか?」


そこで弁護士が出した名前は、なんとPAPA-RATの本名であった。


その瞬間、TOYは驚く様にこの日初めて顔をあげた。


「召喚した〜から裁判長への嘆願書の提出と情状酌量の嘆願文があります」



PAPA-RATは腰を上げ法廷へと立った。



「〜君の事を私は良く知っていますが、彼は本当に真っ直ぐであり、彼がこの様な事になる事を止められなかったのは私達友人一同の責任でもあります。今後は彼が二度と法を犯さぬ様私達一同も彼を見守って参りますので……どうか……彼…を……1日も早く……出してやって下さい…」


涙をこらえ、歯を食いしばりながら嘆願文を読み上げるRATの姿を見て、傍聴席からはすすり泣く声が出始めた。


11,350人分の分厚い嘆願書を裁判長に提出し、傍聴席に戻る様に指示された時に、RATはすぐに傍聴席には戻らず、TOYの方へと歩いて行った。


「召喚人、席に戻りなさい」


裁判長の言葉を無視し、RATはTOYの前に立った。

TOYは動かなかった。同じ体制のまま目の前に立った兄貴の様な存在のRATの足元を見詰めたままだった。


「…頑張れ」


食いしばった歯の間から空気と共にやっとRATはそう呟き、ドレッドを切られボーズになったTOYの頭をくしゃくしゃに撫でた。



その瞬間警備隊がRATを取り押さえ、無理矢理傍聴席に戻した。

同時にそのままTOYは再び手の届かないドアの向こうに連れていかれた。

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