第11話
裁判所の一般待合室。普段は黒い礼服をきたあからさまに顔にヤクザと書いてある人達が占めるこの場所は、この日はかなり様子が違った。
赤、黄色、緑…ラスタカラーを身に纏った、実に100人近い若者達で溢れかえっていたのである。
勿論、その中心にいるのは他の誰でもない、PAPA-RATであった。
「いいかお前ら、絶対に騒ぐなよ。今日はただ大人しく、話しを聞いていればいいんだ…」
〜一週間前〜
RATはTOYの弁護士と新宿の喫茶店にいた。
「自分達が彼に出来る事は何も無いのですか?」
「身内や職場以外の方が法廷に立っても効果は薄いので、出来る事と言えば嘆願書を書いて頂く事ですね…」
「嘆願書…?」
「そうです。簡単に言えば、彼は更正出来るので、彼の事を多めに見てやって欲しいという内容の署名を集めて、裁判官に提出するのです。
RATはすぐにこの一週間以内のREGGAEのイベントをチェックした。そして四方に連絡をして嘆願書の依頼をした。
依頼を受け、真っ先に動いたのは東京を中心に活動するC.H.SOUND。JAMAICAの最新を常に日本に発信し続ける、今や飛ぶ鳥を落とす勢いのSOUNDである。
TOYが上京して初めて行ったイベントがこのC.H.SOUNDの出演しているPLAYPLAYであり、その時からボスのOZIKIには何かにつけアドバイスを貰っていたのである。
C.H.SOUNDは丁度この一週間で、実に5本の営業が入っていた。その全てのイベントでOZIKIを筆頭にC.H.SOUNDが集めた署名は実に1000に近い。その他全国から寄せられた署名は実に10000をゆうに超えるものだった。
そう、山梨レゲエ祭後夜祭が某雑誌に取り上げられて以降、この事件は口コミで広がり、TOYは一躍時の人となっていたのだ。
午後一時からの裁判を控えた法廷は、開始10分前から立ち見が出る程ごった返していた。
少し前まで、
「TOYが出て来たらみんなでガンフィンガー上げようぜ!」
なんて冗談を言っていた連中も、ここになって神妙になっていた。凶暴なライオンでさえ黙ってしまう様な、独特な雰囲気がこの法廷にはあるのである。
間もなく検事や弁護士が席に着き、三人の裁判官が一段高い席に着き時間となった。
「間もなく開廷します。」
裁判官の座る横の扉が静かに開き、TOYは法廷に入った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます