第10話

明日はいよいよ初公判。弁護士はあれがこーだ、これがあーだしてたけど、ぶっちゃけ俺はもうどうでも良くなってたんだよね。。

あれからメグとRATさんに何回も手紙を書いたけど返事は無いまま…他のSOUNDMANが面会に来てくれた時に色々と聞いたんだけど、結局わからず仕舞い。もうこの時点で俺はメグとRATさんに捨てられたものだと思っていた。


自分の将来がかかっている初公判の夜、俺は眠る事無く明るくなるまで過去の思い出の中に深く逃げ込んでいたんだ。



朝になり、もう慣れた不味い朝飯を無理矢理詰め込み、もう慣れた手錠をかけられ、裁判所へ向かう押送バスへと乗せられた。

バスの窓から見える久々の娑婆は霧がかかった様に真っ白で眩しく、外を歩く人達が何故か違う世界の生き物に見えた。一生あそこには戻れない…。そんな錯覚に陥った事をすげー覚えてるよ。



裁判所へ着き、待合室の部屋を言い渡され中へ入ると、間もなく手錠が外され、約八畳の部屋に六人の犯罪者達が解き放たれた。

俺はこの時点で嫌な予感がしてた。行きのバスの中から刑務官にくってかかっていた俺と同じ歳位の奴と同じ部屋になったからだ。案の定部屋に入るなり、そいつはグダグダと1人で話し始めた。

皆適当に面倒臭そうに相槌をうっていたが、奴は構わずひたすら喋り続けた。俺はこんな時にかったるい奴の相手はゴメンだから端っこの壁に寄りかかって目を閉じていた。


「おい、お前何やっただぁ?」


「…おぃ、起きてるんだべぇ?暇だから話しでもしてるべぇ」


明らかに俺に話し掛けてるのが分かったが、俺は体勢を変える事無く、腕を組んで下を向いていた。


次の瞬間だった。








ゴキッ!!








頬骨のあたりに鈍い痛みを感じたと同時に、そいつは馬乗りになって俺の顔面を殴り始めた。

最初こそ腕でガードしていたものの、途中からマジどうでもよくなっちまって俺は無防備に殴られ続けた。



30秒もしないうちに異常に気付いた刑務官が笛を吹き、三十人近い警備隊が部屋になだれ込んで来てそいつを取り押さえた。俺はそのまま医務室に運ばれた。




奥歯が一本折れていた。顔が腫れ上がって左目が開かなかった。そこで俺は何が起きたか取り調べを受け、奴に対する被害届けを書かされた。


裁判を延期するかと聞かれたが、俺は断った。もう早く結果を出して欲しかったんだ。


結論が出ずに悩むのがもううんざりだったのさ。

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