第6話 裏切り

次の朝も、同じようにアリスの声で目覚めると、同じようにアリスに見守られながら、朝食を済まし、会社に向かった。


 歩きながら、夕べの出来事や、なぜあれほど言ってもアリスは一緒に食事を採ってくれないのか、など、様々な疑問や疑念が頭の中を渦巻いた。


 会社に着くと真由美が、いつものように明るい笑顔で迎えてくれた。


「おはようございます。なんか今日は、少しだけ疲れてますね。」

「え?そうかな?」


 なかなか勘がするどい。

 アリスとの生活に、ちょっと疲れを覚えた僕の気持ちを、すぐに見抜かれた。


「あ、昨日約束した食事の件ですけど、明日はだめですか?」

「ん?明日。あー大丈夫だと思うよ。」


「ほんとですかぁ!よかった!じゃあ、店押さえておきますね。約束ですよ。」


 そう言って、真由美は嬉しそうに自席にも戻ると、同僚の女子になにやら報告しているようだった。


 

 今日も仕事を終えて『有巣倶楽部』に向おうと思ったが、ちょっと家を空けていたので、気になって部屋の様子を見に行った。


 案の定、新聞受けに溜まった新聞がはみ出ていて、明らかに留守とわかるようになっていたので、

 防犯上まずいと思い、新聞を取り出した。


 郵便受けにも、それなりに手紙やらチラシやらが溜まっていたのでそれも取り出した。


 部屋に入り手紙をチェックしていると、突然電話が鳴った。


「もしもし?」

「おう、俊介か、どうだ元気にしてるか?」


 親父の声だった。


「どうした?こんな時間に?」

「ん?いや、たいしたことではないんだが、お母さんがな・・・ちょっと入院してな。」


「え?お袋が?なんで?悪いのか?」

「いや、もう手術も終わった。大丈夫だ。その・・・癌とかではないから。ただ胸にしこりが出来て乳腺症とか言ってたな。でも、もう大丈夫だ。一週間くらいで退院できるそうだから心配はいらない。」


「何でもっと早く言わなかったんだよ。」

「いや、母さんがな、おまえに心配掛けたくないから知らせるなと言ったんだ。」


「ったく・・・で、どこの病院なんだ。」

「ん?あー、見舞いならいいぞ。母さんも弱ってる姿は見られたくないようだから。」


「だからって見舞いくらいいかせろよ。」

「ん・・・やっぱり遠慮してくれ。おまえも忙しいだろうし、土日は面会できないんだ。」


「なんで?身内でもか?」

「ん・・・そうらしい。病院の規定で、付き添い以外の見舞いはできないらしい。」


 言い訳がましい親父の嘘をわかりつつも、これ以上言い争っても仕方ないと思い、こちらが引いた。


「あぁ、わかったよ。じゃあ、退院したら連絡をくれよな。家には行くから。」

「わかった。じゃあ、俊介も身体を大事にな。」


「あぁ、親父も無理すんなよ。自分が倒れたら洒落しゃれにならないから。」

「あははは、まだまだ、体力には自信があるから大丈夫だ。」


「そうか・・・じゃあ、また。」


 そういって電話を切ってから、ものすごくへこんだ。


 離婚以来、実家には足が遠のいて、電話すら数ヶ月に一度しかしていなかったので、いまさら親子として見舞いになど、行ける立場ではないが、やはり寂しかった。


 むしゃくしゃする気持ちを抑えながら『有巣倶楽部』に向った。


「おかえりなさーい。」


 眩しいくらいの笑顔で、アリスは僕を出迎えてくれた。

 その笑顔ですべてのもやもやが癒された。


「お疲れさまぁ、今日はどうする?お食事先?それともお風呂入る?」

「アリス・・・。」


 そういって僕は、アリスをギュッと抱きしめた。

 アリスが持ってくれていた鞄が落ちた。


「俊ちゃん・・・。」


 そういうとアリスは、何も聞かずに身体の力を抜いて俺に身を委ねてくれた。

 2、3分そのままアリスを抱きしめていたが、そっと身体を引き離すと、アリスは目に涙をいっぱい浮かべていた。


 驚いて見つめていると、アリスは、


「大丈夫だよ。あたしは俊ちゃんの傍にいるから。」


 そう一言だけつぶやいた。


 そして、涙を拭うと、さっきの笑顔に戻って、


「さ、どうする?ご飯食べる?おなかすいたよね。」

 と、優しく言葉をかけてくれた。


 

 食事を済まし、いつものように風呂に入り、アリスに身体を洗ってもらい、寝室に向った。

 そして、いつものようにアリスは、恥ずかしそうに“添い寝”をしてくれて、僕の胸の中で、スヤスヤと寝息を立て始めた。


「アリス・・・。」


 今本当に、僕の気持ちをわかってくれるのは、アリスしかいない。


 そう、アリスはこんなに幼いのに、僕のことや、僕が感じている切ない気持ちや、苦しい気持ちをすべて受け止めてくれて、

 ただただ、“癒し”を与えてくれる。


 もう、それは言葉では言い表せない、何か大きな海のような、水の中で優しく包まれているような感覚を僕に与えてくれる。

 僕は、いつの間にか、アリス無しでは生きられなくなっていた。


 


「おはよう!朝だよ〜。」


 いつもの子どものままのアリスの声が、寝室に響き目を覚ました僕はゆっくりと起き上がった。

 でも、そのけたたましいほどの声も、僕には、もうなくてはならない音になっていた。


「おはよう。今日の朝食はなんだい?」

「きょうはねぇ、プレーンのオムレツにハムでしょ。サラダにヨーグルトだよ。ブルベーリーソースのね。」


「おぉ、今日もホテルのようなごちそうだな。じゃあ、支度したらいくよ。」

「はーい、早く来てね。待ってるね。」


 そういうとアリスは小走りに部屋を出て行った。


 こんなに癒されて、なに不自由ない生活を送って、しかも無料ただで。

 本当にいいのだろうか。


 でも、その頃から、この『有巣倶楽部』での生活ではなく、

 アリスと二人で家を借りてちゃんと生活をしたいと思い始めていた。


 生活自体は何の不満もなかったが、やはり「有巣倶楽部」という仮の生活空間であることに違和感を覚えていた。

 できれば、あの店長なのだろうか、初老の男と話をつけて、アリスを「身請みうけ」したいと考えていた。


 朝食を済ませ、出勤の支度をして、いつものほっぺにチューをしてもらったあとにアリスが

「あ、俊ちゃん、ちょっと…」


そう言って僕をかがませ、ネクタイの位置を直した。


「よし!似合ってる!」


アリスはにっこりと笑って僕を送り出してくれた。



 「おはようございます。今日は紺のスーツよくお似合いですね。ワイシャツもいつもパリッとしてて、安藤さんはおしゃれですね。」


 また、いつものように真由美が声を掛けてくれた。

 やっぱり好意をもたれているのは、あからさまにわかる。


「ありがとう。木村君もいつも私服はかわいいよね。センスもいいし。」

「ほんとですか?!嬉しい!安藤さん、初めて褒めてくれましたね。」


「そうだったかな。でも、お世辞じゃないよ。センスの良さは前から思ってたしね。」

「わぁ、なんか今日は一日頑張れそう!そうそう、今夜大丈夫ですよね?」


「え?あぁ、今夜ね。大丈夫だよ。仕事早めに終わらせるから。」

「はい、じゃあ私もがんばります!なんかお手伝いすることがあったら遠慮なく言ってくださいね。」


「うん、ありがとう。助かるよ。」

「はい、じゃあ、今夜楽しみにしてますね。」


 そういうと真由美は、また自席に戻って同僚たちになにやら報告している様子だった。


 この歳でオフィスラブのネタにされるとは、思ってもみなかったが、気分は悪くはなかった。


 

 思ったよりも仕事が片付いて、真由美との約束の時間に少し間があるくらいに終えることができた。


 真由美は、僕より三十分ほど早く仕事を終えて、『先に行きます。』と耳打ちして社を後にした。


 帰り支度をして、外に出ると陽気はすっかり春になっていて、そよ風がやさしく頬を撫でていった。


「安藤さん!お待ちしてました。お仕事大丈夫でしたか?」


 後ろから真由美に声を掛けられて、少し驚いた。


「あぁ、ここでずっと待っていてくれたの?」

「いえ、ちょっと買い物があったんで、今来たら安藤さんがオフィスから出てくるの見えて、急いで追いかけてきたんです。」


 確かに心なしか息が荒かった。


「じゃあ、いきましょうか。お店、予約したんで案内しますね。」


 そういうと真由美は、僕の腕に手を回して、腕を組んできた。


 ちょっと驚いたが、まぁ悪くはないシチュエーションなので、そのまま彼女のペースに委ねることにした。


「ここです。来たことありますか?」


 そう言われて周りを見回したが、以前は違う店があった気がするが、この店は初めてだったので、


「初めてだと思うよ。」

 と、言うと、


「よかったぁ、安藤さんおしゃれだから知ってるかと思って。」


 と 言って胸をなでおろしていた。


 “おしゃれ”か・・・、決しておしゃれなのではなく、このところアリスの言われるままに、服を着ているだけだったので密かに苦笑いをした。


 店に入ると落ち着いた感じで、調度品はヨーロッパからの取り寄せのようなものが多く、フランス料理系の店であることを察した。


「どうですか、ちょっといい雰囲気のお店でしょ?」

「あぁ、こんなところにこんな店があったなんて知らなかったよ。」


「でしょ〜、今日は私がエスコートしますから、安藤さんはついてきてくださいね。」


 そう言って、いたずらっぽく笑う真由美がとても可愛らしく感じた。


 席について、注文を彼女に任せると、しばらくしてソムリエがワインを運んできた。


「あ、テイスティングは安藤さんお願いします。」


 そう言われて、グラスを取りテイストしてOKを出すと、


「さすが、素敵です。大人ですよね。安藤さん!」


 いたく感動している真由美を尻目に、今時なら大学生でも、ワインのテイスティングの作法くらい知ってるはずなのだが、と考えてしまった。


 その後、前菜から、しっかりとコース料理が出て、最後のデザートまでの間、ゆったりと真由美との時間を楽しめた。


「安藤さん、これ。」


 コーヒーを飲んでいると、真由美は、そう言って、小さな手提げ袋を渡してくれた。


「ん?なにこれ?」

「開けてみてください。」


 そう言われて、中をみると明らかにネクタイとわかる包装がされていた。


 しかし、その指摘はせずに、最後まで包みを開けてみると思ったとおりネクタイが出てきた。


「これは?どういうこと?」

「安藤さん、まさか忘れてるんですか?自分の誕生日?」


「え?あぁ、今日は・・・、そうか、誕生日か。」

「やだぁ、本当に忘れてたんですか、ご自分の誕生日なのに。毎日働きすぎですよ。少しは身体も気持ちもいたわってください。」


「あぁ、じゃあ、これは誕生日プレゼントかい?」


 真由美が、にっこりと笑顔でうなずく。


「あ、どうですか柄、気に入りませんか?」

「いや、いいセンスしてるよ。ほんとに、ありがとう。気に入ったよ。早速付けてみようか。」


「ほんとですか?つけて、つけて!嬉しい、あ、そっち持ちます。」


 そう言うと、真由美は、外したネクタイを、無造作に丸めてプレゼントの入っていた紙袋に押し込んだ。


「わぁ、やっぱ似合います。素敵です。あ、自分で褒めてるみたいですけど、選んだとき、安藤さんの顔を思い浮かべて一生懸命選んだんですよ。」

「ありがとう。ここじゃつけてる自分を見れないけど、似合ってるなら、よかったよ。嬉しいよ本当に。」


「あ、ちょっと待ってください。」


 そう言うと、真由美は、バッグからコンパクトを取り出し、鏡を僕に向けた。


 覗くように、鏡に自分の姿を映して、ネクタイを見てみると本当によく似合っていた。


「おぉ、本当に似合ってるね。今日のシャツとスーツにピッタリだ。」

「ですよね。よかったぁ、喜んでももらえて、私幸せです。」


 幸せと言われて、ちょっと戸惑ったが、ここまではっきりと意思表示をされているのだから、ちゃんと喜ばないと申し訳ないと思った。


 

 デザートを終えて、支払いをしようとすると


「あ、だめです。今日はお誕生パーティなんですから、あたしが持ちます。」

「いや、そこまでは・・・それに結構するだろう、このコースは。ワインも一本空けたし。」

「いいんです。あたしにさせてください。」

 

強引な真由美の願いに、これ以上言っても返って申し訳ないと思って身を引いた。


 支払いを済まし、店を出るともう11時近くになっていた。


「じゃあ、今日はありがとう。大事にするよ、このネクタイ。」


 そう言って別れようとすると、真由美は急に俯いて黙ってしまった。


 様子を伺っていると


「あのぉ、安藤さん・・・。」

「ん?どうした?気分でも悪いのか?酔ったかな。君の方が多く飲んでたしな。」


「違うんです。安藤さん、今夜・・・一緒にいてくれませんか?」


 耳を疑った。


 “一緒にいる”ということは、男と女である以上、思い浮かぶシチュエーションは一つだった。

 そう言ったきり真由美は、俯いたまま動かなくなってしまった。


 どうしたものか一瞬悩んだが、こんな道の真ん中で、男と女が動かなかったら、周りもおかしいと思うだろう。

 案の定すれ違うカップルがこちらを気にしてみていた。


「わかった。いいんだね。」


 そういうと真由美はこっくりと頷いた。


 真由美の肩をそっと抱き寄せると、そのまま力が抜けたように、しなだれかかって、すべてを僕に委ねてきている気持ちを感じた。


 ラブホなんて何年ぶりだろう。

 妻と交際していた時以来だから、本当に十年ぶりくらいかもしれない。


 その頃とシステムに、さほど変わりはなかったが、部屋に入ってみると昔のような変なきらびやかさはなく、割と小奇麗でシンプルな感じだった。


 ソファに腰掛けると、真由美に断ってタバコを一本吸わせてもらった。

 さすがに落ち着かなかった。


 そうしていると真由美が


「あたし、先にお風呂に入ってきていいですか?」


 と尋ねてきた。


「あぁ、いいよ。俺はあとでいいから。」


 そう返事をすると、洗面所のほうに、スタスタと真由美は向っていった。


 タバコの先から流れる紫煙しえんを見つめながら、

 今自分がしていることが、本当によいことなのだろうかと自問自答していた。


 正直、女性からあそこまで言われて、しかも真由美のような可愛らしいコが、あそこまで意を決して誘ってきたのだから、

 これに応えないのはかえって失礼だし、などとあれこれと言い訳がましく考えていたが、本当のところはアリスのことが一番気になっていた。


 この分だと、もちろん今夜はアリスのところには行けない。


 もっとも、今日は食事をしてくるとあらかじめ言ってあるし、仕事も忙しいことは言っているので、行かなくても支障はないが、本音を言えばアリスとの時間を削りたくはなかった。


 それほど今の僕にとっては、アリスの存在が大きく占めていることを、再確認することになった。


「お待たせしました。お先です。」


 バスタオルに身を包んだ真由美が現れ、そのタオルから突き出た白い肌が、

 さっきまで色々考えていたことをすべて吹き飛ばした。


 急いでシャワーを浴び終え、部屋に戻ると薄暗くなっていて、真由美はすでにベッドの中に入っていた。

 そっとベッドにもぐりこみ、そのままの勢いで真由美にキスをした。


 そうして、一旦真由美と見つめあい、もう一度だけ意思を確かめた。


「本当にいいのかい?」


 こっくりと頷き、真由美はその愛らしく大きな瞳を閉じた。


 ここまで覚悟されれば、あとはそれに応えるのが男の礼儀だ。

 などと自分勝手な考えに納得して、真由美の体に覆いかぶさった。


 薄暗い光の中でも真由美の白く柔らかい肌は、僕の手のひらに吸い付いてきた。

 全身をくまなく愛撫していくと、最初は固かった真由美の体も徐々にほぐれてきて、いつしか僕を受け入れるために身体を開いてきていた。


 真由美の最も敏感なところは、すっかり溢れ出してきて、そっと触れると嗚咽おえつとも取れる声で僕の行為に応えていた。

 充分にほぐれたところで試みようとしたが、逆に僕の方がいうことをきかなかった。


 少し焦っていると、その事態に気づいた真由美は逆に僕に覆いかぶさってきて、唇から徐々にキスの位置を下に向けてきた。

 動きこそぎこちなかったが、とても愛情を感じた僕は、その思いに身体も応えるようになってきていた。


 そして、今度は真由美が僕の一番感じる部分に触れるとゆっくりと動かし始め、

 ついにはその愛らしい唇を這わせ、そっと僕自身を受け入れた。


 少し歯が当たって痛みを感じたが、しっかりと僕自身は固さを増して臨戦態勢に入った。

 真由美の身体を反転させると、今度はお返しに僕が真由美のあふれ出ている蜜をすくっていくと、狂おしいまでの声を上げて反応した。


 いよいよとなったが、さすがに避妊をしないのはまずいと思い、ベットの宮においてあるコンドームを取り出し、

 つけようとしたが、これ自体がすごく久しぶりの行為なので戸惑ってしまった。


 その間、真由美は目を閉じてジッと待っていてくれたが、慣れた女ならここで興ざめとばかりに軽蔑のまなざしを向けただろう。

 やっと準備が整って、真由美と体を密着させて、その部分に僕自身をあてがった。


 真由美の体がピクッと反応して、一瞬身体を硬直させたが、僕が「力を抜いて」と優しく耳元で囁くと、

 スッと力を抜いてきたので、その瞬間に一気に真由美の中にもぐりこんだ。


「あぁ!」


 大きな声で、真由美が反応し、その声に釣られるように僕も体に勢いをつけて動かした。

 僕のスライドに合わせて、真由美はその可愛らしい声を漏らし、徐々に上り詰めていっている様子が伺えた。


 僕もアリスとそういう行為をしているはずだったが、実感として感じるのは本当に久しぶりだった。

 真由美が上り詰める前に、果てそうになったが、なんとか持ちこたえていた。


 そして、ついに真由美の体がピンッと硬直し反り返ってきたので、僕もより深く真由美の中に沈みこむと、

 その瞬間


「あぁぁぁ!いっちゃう!」


 と、真由美は叫んで、身体をベッドから落ちそうなくらい仰反のけぞららせた。


 同時に、僕自身は大量の樹液を吐き出し、真由美の中でピクピクとして果てた。


 グッタリとした二人は、そのままジッとして抱き合っていた。

 そして、我に帰った僕は真由美の唇や頬や目に優しくキスをした。


 真由美は少し涙ぐんでいて、僕の体をギュッと抱きしめると


「うれしい。俊介さん、って呼んでいいですか?」

 と聞いてきた。


「あぁ、いいよ。真由美。」


 そういうと、さらに腕に力を込めて僕の体を抱きしめてきた。



 翌朝は、そのホテルから一緒に出勤したが、真由美は、昨日と同じ服装だから、

『まだ誰も来ないうちに着替える。』と言って、先に会社に向った。


 僕は、しばらく喫茶店でモーニングを食べて時間をつぶすと、そのまま会社に向った。


「おはようございます!」


 いつもの明るい真由美がそこにいた。


 ちょっと顔を赤らめてはいたが、元気ハツラツな態度は、いつもと変わらず挨拶を済ますと、同僚のところでキャッキャと話を始めた。


 やはり、女という生物いきものには計り知れない未知の部分がある。

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