第14話 Encounter with Barian(バリアンとの出会い)

鶏の朝の鳴き声とともに翌朝となった。僕と山田は、朝食をとるためレストランへ向かう準備をする。


山田「酒井さん、おはようございます。昨晩は、思いっきり寝ちゃいましたよ。目覚めがすっきりしています。」


僕「おはよう。山田君。僕もなんだよ。睡眠も熟睡できましたよ。バリ島の時間の流れが癒してくれたんでしょうかね。なんだか昨晩は、ぐっすりと深い眠りについたって感じですね。昨晩の満月も、すごく大きくてきれいでしたもんね。というか、満月の夜ってなんだか神秘的ですよね。満月の夜には、犯罪が多くなるという都市伝説っぽいことを聞いたことがあります。また、満月の夜には出産も多くなるといいますしね。


山田「そうなんですね。なんだが自然の摂理って不思議なことが多いですよね。」


僕と山田は、部屋の扉を開け、プールサイド沿いを歩きながら、レストランへ向かった。レストランへは、昨晩プールサイドのバーで飲んでいたグループが食事をしていた。


食事の内容は、フリードリンクとコンチネンタルスタイルの食事。フレッシュフルーツ盛り合わせと、ブレッドトースト、スクランブルエッグとかなりシンプルではあるが、これで十分な気がした。朝からめい一杯食事をとる習慣がない僕なので、ちょうどいい量だった。プールサイドのレストランは、プールをかすめて吹いて来る朝のさわやかな涼しい風をテーブルへ運んでくる。


僕「山田君、朝のさわやかな風がプールから届いてきて、いい感じですね。」


山田「そうですよね。天気もいいし、スカイブルーって感じの空も南国ムードを盛り上げてくれますね。この天気だと今日も暑くなりそうですね。」


僕「プールサイドのレストランで、朝食っていうのもなんだかリゾートって感じだよね。なかなかいいですよね。」


山田「そうですよね。リゾート感がたっぷりですね。」


ボーイから僕と山田が案内されたプールサイドの席には、サンサンと南国の太陽が降り注いでくる。プールの水で反射している太陽の光が眩しいくらいだった。水面がキラキラと光を放っている。なんだか幸せを感じる僕であった。そんなことを思っていた僕に水面からの風が頬をかすめた。


ボーイ「酒井様、山田様。おはようございます。ドリンクはフリードリンクになっています。お好きなものをお選びください。フレッシュオレンジジュース、グレープフルーツジュース、アップルジュースがあります。食後のドリンクは、紅茶かコーヒーのどちらがよろしいですか。」


僕「そうですね。僕は、紅茶で。山田君はいつものコーヒーでいいですか。こちらのコーヒーはバリコピなんですよね。」


山田「バリコピってなんですか。」


僕「バリコピは、バリ島のコーヒーなんですよ。山田君はコーヒー好きだから、きっと満足すると思うよ。お土産にもバリ島の珈琲は人気なんですよ。」


山田「そうなんですね。バリコピを是非味わってみたいです。」


僕「バリ島のコーヒーは面白い飲み方をするんだよね。」


山田「どんな感じなんですか。」


僕「カップにコーヒーの粉を入れ、お湯を入れます。その後かき混ぜるんだけど、すぐには飲めないんだよね。コーヒーの粉が沈殿した上澄みを飲むんだよね。だから、最後まで飲んじゃうと、口の中にコーヒーの粉が残り後味が悪いんですよ。」


山田「国によってコーヒーの飲み方も変わるんですね。面白いですね。というか興味深いです。酒井さん、またまた雑学、ありがとうございます。俺、もっともっといろんな文化に触れてみたいですよね。」


僕「僕が持っている知識なんかは本当にわずかなものですから、世の中には、僕たちがまだまだ知らない事がたくさんありますから。まだまだ勉強のやり甲斐がありますね。僕もまだまだ勉強が足りないですからね。」


僕はバリ島の雑学を山田へ伝えて、山田が喜んでくれたことに対してうれしさを感じた。

ボーイへはその後、二人そろってスクランブルエッグをオーダーした。


プールサイドに入り込む太陽の光が、まぶしく僕と山田に生きるというエナジーを与えてくれているように感じた。運ばれてきた朝食を僕と山田は食べ始めた。


山田「酒井さん。今日って、エディさんのガイドでブサキ寺院と天空の寺院のランプヤン寺院へ行くんですよね。それにバリアンに会いにいくんでしたよね。」


僕「そうですよ。エディさんが迎えに来るまではもう少し時間があるから、ゆっくりと朝食をとっても大丈夫ですよ。」


山田「了解です。そのまま、出かけても大丈夫な準備はしているので安心ですよ。」


僕「僕も山田君と同じですよ。」


僕は、山田よりも少し早く朝食を済ませた。ある程度は日本でバリアンの情報収集はしていたが、念のため、ガイドブックで改めてバリアンの情報を収集し始めた。ドライバー兼ガイドのエディへバリアンとの待ち合わせの住所を伝えるため、予約サイトをインターネットでアクセスし確認をしておいた。予約完了メールに待ち合わせ場所の住所が記載されている。僕たちの滞在ホテルのある繁華街のクタ・レギャン地区からデンパサール市内へ行く途中のあるようだった。ただ、現地の裏通りをある程度知らないと行きつくことができないように思えた。


エディ「酒井さん、山田さん、おはようございます。お待たせいたしました。車の用意ができました。このまま今からバリアンの待ち合わせ場所へ行かれますか。」


僕「そうですね。お願いできますか。」


山田「俺も大丈夫ですよ。バリアンに会えるって、すっごく楽しみなんですけど。早く会ってみたいです。いったいどんな装いなのか楽しみです。いかにも占い師って感じなんでしょうかね。」


僕「そうですね。僕も初めて会うので一体全体どんな結果になるのか、どんな人柄なのかはわからないですね。どんなヒーリングの結果がでるのか楽しみです。」


僕と山田は、エディの運転するTOYOTAとロゴの入ったジープへ乗り込み、いざ、出発となった。バリ島の朝の澄きった空気の中、僕たちを乗せた車がジャラン・レギャン通りを突っ切っていく。ちなみにジャラン・レギャン通りは一方通行だが、逆走しているバイクもちらほらとある。そこのところは、バリ島の「ティダアパアパ」って感じだ。日本語では、「お気になさらず」って感じだ。自分の体は自分で守るしかないってことだ。事故に合うのも自分の不注意ということになる。日本ではありえないけれど、そこがバリ島では通用してしまう。


僕たちの乗ったジープは、ジャラン・レギャン通りを通り抜け、十字路に差し掛かった。そこはベモコーナーの交差点である。ちなみにベモとはバリ島内での人々の足になっている公共の乗り合いバスのようなものだ。ワゴン車を改良し、椅子を電車のように縦に並べ一人でも多く乗車できるような作りに改造してある。ベモコーナーを左に曲がり、ジャラン・ラヤ・クタ通りを道なりに進んでいく。


間もなくするとイマム・ホンジョル通りの右手側にケンタッキーフライドチキンのお店が見えてくる。バリ島のケンタッキーでは、日本の店とは違いスープやライスもオーダーできる。国によってチェーン店のメニューも変わってくるようだ。ケンタッキーの店舗で、バリ島でオーダーできるスープはかなりいける。僕のお気に入りである。滞在期間中、僕は結構な頻度で、このケンタッキーの店を訪れていた。もちろん、スープ目当てである。山田にも後で教えてあげよう。


エディ「酒井さん、山田さん、こちらのケンタッキーのソトアヤムは、すごくおいしいですよ。」


山田「酒井さん、エディさんが言っているソトアヤムってなんですか。」


僕「鳥肉のスープですよ。僕もここのケンタッキーのソトアヤムが好きなんですよね。すごくおいしいんですよ。インドネシア語でソトはスープの意味です。アヤムは、鶏肉ですね。サテアヤムのアヤムですよ。」


山田「そうなんですね。俺もソトアヤムを食べてみたいです。」


僕「じゃ、明日か明後日ぐらいにいってみますか。」


山田「了解です。マジ、楽しみです。」


おそらく、このケンタッキーのソトアヤムの味は、山田の口に合うと思う。僕と一緒の味覚も持っていそうだから。僕は、変わり映えのない昔ながらのバリ島の景色を眺めながら車に乗っていた。水田には水牛で田んぼを耕している農夫の姿も見られる。ただ、道沿いでは、工事中の建物や道路の工事中の看板が目につく。


ジャラン・レギャン通り沿いにもホテルの建設ラッシュのようで、あちらこちらで見ることができていた。その景色も山田にとっては、初めてのバリ島ということもあり見る景色が、すべて新鮮に目に移っていることだろう。


バリ島の首都デンパサールまでは、今、僕たちが通っている通りを一直線に道なりに進めば到着する。通りに平行してマティ川が流れている。この川は、途中、簡単ないかにも現地の人が使う手作りのようなつり橋があるが、その橋は、いまにも崩壊しそうな感じをいつももっている。手作り感満点の橋になっているからだ。僕は、まだそのつり橋を渡ったことはない。というか、渡ることもないだろうと僕は思う。


つり橋を過ぎたあたりを右手に曲がる通りがあった。その通りは、ジャラン・ラヤ・メルデカ通りという通りだった。その通りに入り細かい通りを何度か右往左往した後、僕と山田とエディは、ようやく、バリアンとの待ち合わせ場所へ到着した。裏路地のような道のため、おそらく通りの名称はないだろう。


バリアンの待ち合わせ時間は、AM10時だった。到着したのは30分前の9時30分だった。バリアンが経営しているらしいカフェでの待ち合わせだった。まだオープンはしていない。この早め早めの時間の段取りは、なんだか日本人っぽいとつくづく感じた。



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