第13話 Moonlit night(月夜)

ボーイ「おかえりなさいませ。おいしい食事は楽しめましたか。」


僕「もちろんです。ナシゴレンを食べちゃいましたよ。」


山田「ナシゴレン、超うまかったですよ。俺感動しちゃいました。サテアヤムもおいしかったですね。」


ボーイ「それはよかったです。酒井様。こちらが部屋のキー26号室です。どうぞ。」


僕「テリマカシ」


ボーイ「サマサマ。そうそう酒井様、今晩はバリ島でも年に一度あるかないかの月のきれいな日なんですよ。月がいつもより近く感じられますよ。この日には、この世のもでない者たちが、街を徘徊すると言われているんですよ。悪い意味ではないんですけどね。」


僕「そうなんだ。だから、今晩はなんだか空気が生暖かいというか神秘的な印象を受けたんでしょうね。バリ島は神様の棲み島ですからね。そんな都市伝説もあっても似合いますよね。」


といった会話をし、僕はボーイから26号室のルームキーを受け取り、僕と山田は部屋へと戻っていった。


僕たちのコテージの前にあるプールの水面に移り込んでいる満月から少し不思議な感じを受けた。その感覚は後程、感じ取ることになるけれど、その時の僕と山田には、感じ取れなった。今回のキーワードは「水」であると、この時の僕にはわからなかった。


山田「酒井さん、プールに映り込む満月はなにかわからないけれど、不思議なエナジーを感じ取っちゃうんですけど、何なんでしょうね。水辺ってなんだか神秘的ですよね。」


僕「そうだよね。特に月が水面に映り込む感じは、何かこの世に見えないエナジーを感じちゃうよね。それにこの満月は年に一度あるかないかの月らしいですよ。」


そういいながら、僕と山田は部屋のキーをさし、木製の扉を開けた。予め、蚊取り線香を焚いて出かけていたので、少々、部屋の中が煙でむせる感じがした。床はタイル張りの部屋だから、蚊取り線香を炊きっぱなしでも問題なかった。


僕「山田君、ちょっとドアをしばらく開けていてもいいですか。蚊取り線香を焚きながらであれば、虫も寄ってこないでしょうから。」


山田「もちろんですよ。このバリ島の夜風にあたっていたいという感じですね。コテージの前にあるチェアーで夕涼みしていてもいいですか。」


僕「もちろんですよ。このまったりとしたバリ島の空気感を感じ取ってください。体にもプラスになりますからね。エナジーチャージできますよ。」


僕は扉を全開に開け、部屋の中へ夜風の空気を導きいれた。なんとも言えない解放感がそこにはあった。その解放感は、新鮮な空気が入って来ただけでなく、バリ島の空気感で、僕自身の心も解放された感覚になった。僕は部屋の前にあるプールサイドへ腰を掛け、足をプールの水につけ、満月を眺めていた。プールサイドの水は心地よい気持ち良さの水温であった。


山田「酒井さん、この満月、きれいですね。というか、バリ島では夜空の星が地上に近くに感じるんですけど。緯度のせいでしょうかね。」


僕「どうだろうね。僕も、いつも月が近いなっておもっていましたよ。緯度の関係でしょうかね。このジャラン・レギャン通りの先には、ビーチ沿いのパンタイクタの通りがあるんですけどね。そのビーチから、夜空を眺めるとなんだか漆黒の海の沖合から、何かが出てきそうに感じ取れちゃうんですよね。でも、夜空は非常にきれいに見えますね。まだまだ、地球も捨てたもんじゃないって思っちゃいますよ。」


山田「明日の夜はビーチで、夜空を見てみたいですね。波の音をBGMにして、「無」の状態で、「ぼーっ」と過ごすのもなかなかいいですよね。」


僕「そうですね。そうしましょうか。」


僕と山田は、そんな会話をしながら部屋へと戻っていった。部屋にはクーラーがかかっており、ひんやりと気持ちの良い風に包まれていた。


僕「山田君、バリ島での初の夜はいかがでしたか。南国の解放感をたっぷりと感じ取れましたか。」


山田「南国ムードいっぱいで、充実したバリ島の初日の夜でしたよ。途中立ち寄ったレゲーバーもすごく楽しい時間だったし、夕食で食べたナシゴレンとウォーターメロンジュースもおいしかったし、大満足ですよ。」


僕「山田君が気にいってくれてよかったですよ。」


山田「酒井さん、明日はどうしますか?」


僕「明日は、バリアンに会いに行くんですよね。日本から予約を入れているんです。明日会うバリアンはなかなか予約が取れないって有名なんだよね。今回は本当にタイミングよく取れましたよ。ラッキーでしたね。」


山田「それはよかったですよね。ところでバリアンって何をする人ですか。俺、なんだか興味があります。」


僕「そうだな。バリアンっていうのは、バリ島で代々引き継がれる占い師のようなものですね。呪術を行ったりね。例えば体調が悪くなるとバリアンへ診てもらって悪いところを直すって感じですね。その際に処方としてバリ島の漢方のようなものをいただいたりするみたいですけどね。」


山田「明日、お会いするバリアンってどんな占い師なんですか。」


僕「今回、予約を入れたバリアンは、バリ島有数のオーラチャクラを見てくれる人のようなんですよね。なかなか予約が取れないって有名なんですが、今回、運よくすぐに予約が取れたんですよね。」


山田「そうなんですね。何か縁を感じますよね。酒井さんとそのバリアンとのご縁も何かありそうですよね。」


僕「今回、こんなに早く予約が取れたのは、なんだか人には見えない力によって、このようになった感じがするんですよね。」


山田「俺もそう思いますよ。なんだか今回は俺もバリ島へ呼ばれているって感じがしますね。まさか酒井さんと一緒にバリに来るなんて、俺もまったく思っていませんでした。たまたまスケジュールが空いたって感じだったんですよ。本当に偶然なんですよね。」


僕「そうだよね。山田君のバリ島渡航は、急遽、決まったって感じですもんね。」


山田「そうなんですよね。本当に不思議だったんですよね。奇遇というか偶然というかってあるもんだなって思っちゃいましたよ。」


僕と山田は、偶然の積み重ねの不思議さを実感していた。お互いのバリ島初日の夜は、各々にいろいろなインスピレーションを植え付けたようだった。お互いのベットに入り、僕たちはそれぞれ眠りの世界へと入った。

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