転入初日の事件


「……出来ましたわお嬢様!あらお綺麗ですこと……。」

「……ありがとう。馬車の用意は出来てるかしら?」

「はいっ!出来てます!」

「では、参りましょう。」

くるりと扉へ向かう。結ってもらった髪が揺らりと揺れる。







+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+



「……あの方は誰?」

「美しいわ。」

「まるで月の女神のようね……。」

「ねぇ、あの方ってー……」


「リヴェラ・ディアメイル様……


あの女、シャルロットの、妹君よ。」


コツンコツンと、廊下を歩く音が響く。

朝から注目の的だった。

「……めんどくさいものね。」

はぁ、とため息を零す。

それにしても、メイド達気合いを入れ過ぎでは??

見た事ない人みたいになっているわ。

低めの位置に結ってある銀の髪。

薔薇色の頬に桜色の唇……。

誰かしら。


「お嬢様!此方です。」

「えぇ、ありがとう。」

只今、教室に向かっている。

見慣れた景色なのだが、やはり人とは緊張してテンパるものだ。

コツコツとメイドの元へ向かい、教室に着く。

ガラリと教室を開けると、一気に視線が私に注目する。

「……なんて……い」

「まるで……のようだ」

なんと言っているのだろう……。

まさか悪口?この姿でも悪口……まぁ悪女の妹だしね……。

「はい皆さん静粛に。今日は転校生が来ています。」

私は先生の横に立ち、挨拶をする。

「皆様御機嫌よう。リヴェラ・ディアメイルです。皆様ご存知の通り、シャルロット・ディアメイルの義妹です。愚姉が御迷惑をお掛けした様で。愚姉に変わり謝罪致します。

そして、これからよろしくお願い申し上げますわ。」

妹だと分かるように、自分で自分を貶す。

今の自分はシャルロットではないから。

「皆さん仲良くする様に。リヴェラさん、彼処に。」

「分かりました。有難う存じます」

コツコツと指定された席に向かう。

ジロジロ見てくる者皆に微笑みを返すと、みな顔を赤くし、顔を隠す。

そんなにこの顔が綺麗かな?まぁ化け過ぎですけども……。

「さて、早速授業をー……






+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+


「御機嫌よう。……えーっと、リヴェラ様」

「あら御機嫌よう。……失礼ですが、お名前を聞いても?」

なーんてね。知ってるわよ!!

ヒロインのメノウ……メノウ・ノゼル。

シャルロットが1番目を付けてた子ね。

「あらぁ。私はぁ、メノウですぅ。メノウ・ノゼルですぅ。これから仲良くして下さいねぇ。」

「えぇ、宜しくお願いします。」

「……チッ。

…………きゃあ!痛いっ!離してぇリヴェラ様ぁ!私が、私が悪かったですからぁ!」

急に舌打ちをしたかと思えば大声で叫び出す……

なんだこいつ。腹立つわぁ。まぁやり返すしかないよね。

丁度先生や他の生徒が寄ってこようとしてるわけだし。


パァン


そんな音と共に頬に激痛が走る。

自分で自分を叩いた。

メノウの顔、これは傑作だなぁ。

「きゃー。メノウさん、急に頬を叩くなんて……!私、何もしてませんのに……」

寄ってきた人が周りに集まる頃、私は最近会得した嘘泣きで頬を抑える。

「……っ。メ、メノウやってないからね!この女が最初に……いや、この女が自分でー…!」

「あの慌てよう、メノウ嬢がリヴェラ様を叩いたのか。新入り貴族が上位貴族を叩くなど……」

「じゃああのメノウさんの悲鳴は自作自演?」

「けど、リヴェラ様が自作自演した可能性も……」

「けど泣いてるわ。それに、頬も腫れて……。自分でこんな事をするなんて唯の馬鹿よ。」

はーい。ご名答。唯の馬鹿です。


「なんの騒ぎだ。」


……おや。殿下のお出ましじゃないか。

確実。999.9%私を責めるでしょうね。


「殿下ぁー!わたしぃ、リヴェラ様にぃ、虐められたんですぅ。助けてくださぁいぃ」

「おぉメノウ……可哀想に……さて、君を虐めた愚か者は……ッ。」

殿下アホが停止してる。なんだ人の顔を見て停止するなんて。失礼極まりない野郎だな。

「……君が、シャルロットの妹か。」

「えぇ殿下。私がリヴェラ・ディアメイルです。以後、お見知り置きを。」

まぁ目を付けられても迷惑なだけだが。



「初対面で申し訳ない。私とー……


結婚してくれないか。」


「は????」

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