第4話

今朝も、会った。

その時には、顔は見えていたはずだ。


でも・・・


制服姿に、驚いたのだろう。

そっちの、印象が強かった。


て、いうか・・・

まだ、制服姿ですか・・・


「徹さんと、必要な物を買いに行ってたら、着替える時間がなくて・・・」

その格好では、犯罪になります。


「父さんは?」

「部屋で、仕事をしているよ」


そうか・・・

締め切りまでは、少し余裕があるな。


でも、父を見て、作家だけはやめておこうと思う。

とても、大変だ。


「お姉ちゃん、すぐに食事作りますから」

「いいよ。私が作るから」

「勉強はいいんですか?」

「うん。気分転換になって、楽しいよ」

そういうものですか・・・


仕方ない。

お言葉に甘えよう。


そういや、女の人の手料理は初めてだ。

母さんのは、記憶にない。


「で、何を作ってくれるんですか?」

「堅苦しいから、敬語はいいよ」

「何を作ってくれるの?」

次の一言に、言葉が出てこなかった。


「鍋」


確かに簡単だ。


そして、父を含めて3人で食事。

お姉ちゃんは、僕の向かいに座る。


湯けむりの向こう側で、顔は見えない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る