第5話
彼の、爪垢を食べる
彼の言いなりに成る。彼の言葉を欲する。会いたいと願い、口づけしたいと願う。
彼の舌を私は、私の物にしたい。彼の言葉を聞きたい。彼が願うならば、私は死にたいと願うのだろうか。彼の言葉は、私を締め付けるのだろうか、
彼の言ったことを全て聞き倒せるだろうか。彼の言いなりになれたならば、私は口づけをしたい。
泣きそうになりながら言った言葉は、私自身を締め付ける。左腕が痛いと言わなければ彼に会えなかったかもしれない。彼の言葉さえ聞かなければ、いずれボロボロにならなかったかもしれないと思った事もあった。
彼の言葉じゃなく、私自身の言葉と何かに淘汰されていたのかもしれない。気が付けば、只の夢だったならば良かった。
只の夢じゃなく、これは
現実。
彼の言葉を聞きたい。
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