第3話

 彼の腕に抱かれたくて、雨に体を預けて全てを流すつもりで体を濡らした。


息が凍る。雨に濡れた体が体温を下げていく。


 次第に弱まってくれればいい。

ただ、今は濡れたい。

寂しくいたい訳じゃない。


濡れた体が右腕に刺激を与えた。まだ、体は弱まってはいない。


濡れた体は、まるで左腕を求めたいと願っている。


寂しくて、彼を探しても空箱を揺する様に、歩き回っても空箱だけが残される。


濡れた体は、彼を求めたいと願った。願っても、濡れた体には答えは今出ない。


彼に会えたならば。


濡れた体は、彼になりたいと願う。濡れた体は雨に打たれる。


帰らないでなんて言えたならば、変わっていたのかもしれないと思う。帰らないでなんて言えない。



帰らないでとは、何処の言葉なのだろう。帰らないで。


雨は正直にさせてくれる気がする。雨は正直にさせてくれる。


雨に打たれる体は、全てが境地。

苦しいの先にある者。


あの人に、雨は会えたならばと言わせた。

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